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それからいくつかの試験を受けて、それらを完璧以上にこなし続けたAはいつしか完全に緊張から解き放たれたようだ。
いつも通りやっていればなんの心配もいらない。空中でひらひら動く的を3つまとめて撃ち抜いて、フンと鼻を鳴らしてドヤ顔できるくらいの余裕は身についていた。
そして、
｢次が最後の試験だ。最終試験は実戦形式。適当に二人一組になってもらって、その相手と闘ってもらう。魔導書を使ってもらって構わない。攻撃魔法の一つや二つ、覚えているだろう？｣
………戦闘。戦いが仕事である魔法騎士団の入団試験において最大の山場はここだ。完膚なきまでに相手を打ちのめしてこそ実力を認められるもの。確実に勝てる相手を一撃でノしても見せ場が減るし、かと言って強すぎる相手に挑んで負けては元も子もない。相手選びは重要だ。
弱すぎず強すぎず……そんな絶妙なラインの受験生を探すうえで、これまで散々目立ってきたAを選ぼうなどという物好きはもちろんいない。ここに入ってきた時同様、サーーッと周りから人が離れていく。
(泣きたい─────！)
比較的近くにいた少女に｢ねえ｣と声をかけてみるも、少女は一気に顔を青ざめさせて｢貴女とは絶対に嫌！｣と半泣きで逃げていってしまった。
泣かせるようなことした覚えはないのに。泣きたいのはこっちだ。
…そんな中、絶望の淵に立つAをジッと見ていた影があった。
それがかの有名な“四つ葉”に選ばれた下界出身の少年…ユノ。
実を言うと試験が始まった時から、彼女のことが気になっていたのだ。
近づくだけでも皮膚がヒリつくような凄まじいオーラを纏っていながらも、どこか履かなくて不思議な雰囲気を漂わせている。
良かったら俺と…───、独りになったAに歩み寄ろうとするユノだったが、先を越されてしまった。
｢やぁ、君ちょっとした有名人だよね｣
｢！｣
｢僕と組まない？見た感じ相手はまだ見つかってないようだし｣
｢いいの…………？！｣
｢モチロン！だって君みたいな目立って強そうなのに勝ったら僕の株が爆上がりじゃないか｣
｢下心モロ出しで逆に潔いいね｣
まぁでも無理に隠して上っ面の態度で接されるよりは全然いい。
｢私はA｣と右手を差し出すと、眩しい笑顔で握り返してくれる。早速仲良くなって自己紹介をし合う2人を横目に、ユノは小さくため息を吐いた。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2022年3月13日 10時
