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あらゆる店を周って体力回復の薬草や消耗品の魔導具など、任務に必要な資材を買い揃えた後、Aたちはバネッサが言う｢とっておきの場所｣に向けて歩を進めていた。
｢とっておきの場所って……ここただの路地裏じゃ…？｣
｢こっちよ、こっち｣
｢え゛ッ？！｣
店どころか道すらありませんが、と3人が首を傾げていると、なんとバネッサは横の壁にぬっと入り込んだ。彼女を真似ておそるおそる壁に触れてみると、その向こうの空間へと手が伸びていく。
｢ここって……！｣
｢
大通りの賑やかな雰囲気とは打って変わり、ひんやりとして薄暗いその空間の名称に、Aは少しばかり進むのを躊躇った。
｢あら驚いた？王族や貴族は毛嫌いして近づかないものね｣
バネッサの言う通り、この闇市には危険な品物が揃っていて不潔だから、ここにだけは絶対に近寄るなと口酸っぱく言われていた。
並んでいる魔導具はどれも見たことのないものばかりでおっかないけど、その効能は凄まじい。試しに魔力増幅の効果があるらしい宝石の埋め込まれた杖を握ってみると、身体の内側から魔力が溢れるのを感じる。未知の感覚に驚き、慌てて元の場所に戻して値札を見ると、Aが持っている金の数十倍はするようだ。とんでもない、こんなの買えない。
｢あなた魔力のコントロールまだできてないでしょ？できるようになったのはその場に留めておける魔法だけ｣
｢そ……そうだけど何か？｣
｢ここには魔力を抑えるアイテムもあるわ。相性のいいアイテムを見つけて魔力を調整すればコントロールできるようになるかもしれないわね｣
｢！｣
ノエルの長年の悩みだった魔力のコントロール。どうすることもできないと諦めかけていたところだったが活路が見えかけて、ほんの少し顔色が華やいだ。最近の自分が急成長しているのは紛れもなく、魔法騎士団に入ったおかげだ。厳密に言えば、Aやアスタと戦って、仲間というものの暖かさに触れたから。不意に彼女と目が合ったAは｢ガンバろう！｣の意を込めて、ぐっと拳を握って笑いかけてみせた。
笑い返してくれたノエルの笑顔は、どこの誰よりも輝いていた。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2022年3月13日 10時
