Page.37 ページ39
･
そんなこんなでやってきた城下町“キッカ”。
平界の上部中央に位置するキッカを訪れるのは平界に住む平民がほとんどだが、稀に貴族や、そのまた稀に下民が足を運ぶこともある。
誕生日や特別な日にだけ、｢Aの好きなもの買っていいよ｣と家族に連れてきてもらったことを思い出し、足取りは軽く、今にも踊り出しそうになる。
｢おい……あのローブ、魔法騎士団じゃねえか？！｣
｢あれは…………ゲッ！“黒の暴牛”！！｣
｢あんな小僧が？｣
魔法騎士団のローブを身に纏い、堂々とキッカの街を歩くAたちは些か目立つ。いつの間にやらそこにいる殆どの人たちの視線が集まっていた。
｢あれ……“黒の暴牛”の酒乱魔女バネッサだぜ…！｣
｢隣の可愛い子達も“黒の暴牛”か？｣
｢ちょっと待て、あの子A･リュネットじゃねえか？！｣
｢ええっ？！今年の入団試験で“金色の夜明け”団からの指名蹴って“黒の暴牛”入ったとかいうエリートの？！｣
(めっちゃ身元割れてる…────)
冷静に考えてみればあれはなかなかの奇行だった。ただでさえ“とんでもない魔力を持つ貴族のお嬢様”なんて名目で目立っていたのに更に目立つようなことをしては、ここまで知名度が広がるのも無理はない。こうしてジロジロ見られるのは何だか恥ずかしくて、隣を歩いていたノエルにくっつくと、｢何よもう｣なんて言いながらも頭を撫でてくれた。
｢ちょっと騒がしくなってきたわね｣
｢いーのいーの。魔法騎士団がいるだけで犯罪の抑止にもなるし。
それに素敵な殿方が寄ってくるかもしれないし♡｣
｢後半が9割ですよね｣
｢酒瓶大量に持って言われても…………｣
･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 105人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まめこ。
| 作成日時：2022年3月13日 10時
