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｢“魔樹降臨”｣
ウィリアムが言うと、どこからともなく木が生えてくる。
木は受験生の前へと根を伸ばし、その先から箒が形成された。
Aが目の前に落とされた箒を手にすると、根は生えてきた空間へと戻り、そのまま消えていった。ここまで精密な魔法のコントロールができる魔道士はそういないだろう。流石は最も魔法帝に近い男。その魔力も実力も、Aでは到底及ばない。
｢それではこれより、魔法騎士団入団試験を始める…！
諸君らにはこれからいくつかの試験を受けてもらう。その様子を我々9人の魔法騎士団長が審議し、後に各々欲しい人材を採択させてもらう｣
いかに己の実力を見せつけることができるかが勝敗の決め手だ。
ここで目立った活躍をできなければ団長に選ばれることはなく…即ち、魔法騎士団に入団する資格はないと判断される。それだけは絶対に避けたいと、Aは力強く箒の柄を握りしめた。
｢一次試験は、その箒を使って飛んでもらう。魔力をコントロールできる魔道士なら感覚でできることだ。魔道士の最も基本の移動方法だよ。箒飛行ができなきゃ話にならないよ…！｣
箒での飛行は基本中の基本。Aは箒に跨ると、地面を蹴って軽やかに宙へ浮かび上がった。ウィリアム曰く、これを見れば魔道士としてのセンスがだいたいは分かるらしい。周りを見れば上手く魔力を操作できずに手こずっている者がいるようだが、Aにとって空を飛ぶことなど御茶の子さいさいだ。
(こんな簡単なこと、寝ながらだってできる)
基礎だと思っていたがどうやらできない者の方が多いようで、無事に飛べているのはA含め数人しかいない。その中にはあの“四つ葉”に選ばれた少年もいて、余裕そうに箒の上に立つ姿に少しの対抗心を覚えたAは、スピードを上げて空中で一回転してみせた。
─────操作に手こずる素振りもなく、風のようにくるくると空を舞う彼女の様子に、ウィリアムは口元を僅かに緩ませていた。
(素晴らしい魔法のコントロール………流石はクラウスの妹君だ)
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2022年3月13日 10時
