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｢そんなに薄汚い獣どもが大事か｣
苛立ち混じりにヒースが手を伸ばすと、また氷の礫が飛んでくる。
｢そんな氷跳ね返してや───…！｣
｢氷霧複合魔法“無限
氷と霧の合わせ技である氷霧複合魔法により、霧で見えない視界の奥から氷が飛んでくるという厄介な状況に陥った。……しかしこんなもの、Aの魔法があれば脅威ではない。
｢双獣召喚魔法“紅き獣の蹂躙”｣
入団式でゼルダ相手に召喚した2頭のドラゴンが煙の中から姿を現した。
1頭はその巨躯を村人たちに覆い被せるようにして氷から守り、もう1頭が首を擡げて咆哮を上げる。
｢相変わらず規格外だな、お前の魔法！｣
｢君もね｣
攻撃側に残ったドラゴンが喉の奥から火を噴くと、上空の氷がまとめて水と化した。元より氷には炎だと決まっている。防御のドラゴンでも捌ききれなかった氷はマグナが打ち飛ばしてくれているし、このまま優勢を貫けば勝てる。
何よりドラゴンの最高火力で吹き飛ばせばあんな者たち一瞬だ。
……………が、
｢そんな……！｣
大きく息を吸い、ヒース目掛けて灼熱の炎をお見舞いしてやる。
入団式でゼルダの鉄魔法を一撃で溶かした炎だが、しかしそれは、巨大な氷壁によって易々と防がれてしまった。最高火力…故に魔力消費も激しい。幼い頃から魔力を褒め称えられ、自分なら誰にも負けないと心のどこかで思っていたからか、呆気なく散った炎たちを前に絶望する。
(今の私じゃ……足りない…………！)
魔法というものをナメていた。悪いやつをぶっ飛ばすだなんて大口を叩いたが、本物の“悪”の強さはAをも超えてきた。打ちのめされた隙に回り込んだ氷の破片が肩口に突き刺さる。
｢ぐ、っ！｣
｢A━━━！｣
尻もちをついたAの前に立ちはだかったノエルが水魔法を放つけど、やっぱりそれは当たらない。
｢………ダメだよノエルちゃん、貴女は下がってて｣
｢ええ。安心して下がるわよ…………アンタがちゃんと本調子で戦って勝ってくれるならね！｣
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2022年3月13日 10時
