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フィンラルの空間魔法で移動できるのは目に見える範囲の場所か、事前に魔力でマーキングした場所へだけ。ド田舎であるソッシ村などマーキングどころか存在すら知らないうえにもちろん目に見えるような近場でもないため、今回は彼には頼れず。
そういう訳でAたちに強いられた移動手段は、やはり箒。
｢俺、箒で飛ぶのできないんすけど｣
｢私も｣
((えええ……))
忘れていた。魔力のコントロールのできないノエルに箒の操縦は困難だし、そもそも魔力を持たないアスタでは浮かぶことすらできないだろう。貰った箒に早速跨り、出発準備万端だったAはその浮かれ気分を叩き落とされたようで、先は長いぞとため息を吐いた。
｢ったくしょーがねえなぁ。俺の愛箒にまとめて乗せてやるぜ｣
何もできない新入り2人を前に、マグナの兄貴肌が炸裂する。
置いていくでも走らせるでもなく、しっかり自分の箒に乗せてくれようとするその優しさと漢気は大したものだが、そういう漢気はだいたいから回るもので。
｢その名も
｢ノエルちゃん、私の乗る？｣
｢ええ。お邪魔させてもらうわ｣
｢何でだよ！！｣
かっけえ！と目をキラキラさせてマグナの箒に飛びつくアスタの横で静かに引いていたノエルに声をかけると、彼女は｢大好きよA｣と微笑んで箒の後ろに跨る。とてもあのダサくて厳つい箒に乗ろうとは思えなかったようだ。
｢大丈夫なんすか先輩？｣
｢男に二言はねえ！！行くぜ！！ついてこいお嬢！！｣
頗る暑苦しい2人の熱気に当てられて焼け焦げそうなAとノエルの前でマグナはその紅零爾威災駆乱とやらを発進させた。持ち前の炎魔法で加速した箒はとんでもないスピードで空へ飛び立っていく。
｢ちょっと置いてかないでよ！頑張りなさいA！｣
｢いや、私も一応新人なんですけど…………｣
魔力を込めて地面を蹴ると、あっという間にマグナたちに追いついた。
速すぎだろお前！と褒められながら怒鳴られて、Aはまたため息を零す。そして、私が優秀でよかったですねと、つくづく実感した。
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2022年3月13日 10時
