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遠くの森に水柱が落ちると、魔法が爆ぜて爆音がしたあたりから悲鳴が聞こえてくる。見事に水柱が直撃したらしく、何故か森の中からアスタが飛び出してきた。後に聞いた話では｢トイレ探してたら迷った｣らしいが、どこをどう進んだのだろうか。
｢ちょーどいいトコに飛んできたな｣
｢どふっ！｣
｢ちょっとアレどうにかしてこい｣
｢いやいやいやいやあんなんどーすりゃいいんすか？！あんなとこまで飛べないです─────……し｣
｢今ここで限界を超えろ｣
(鬼畜か！！)
Aの心の叫びも虚しく、片手で軽々持ち上げられたアスタはそのまま球体目掛けてぶん投げられた。ハンドボール投げの感覚で人も投げるのかこの人は。アスタは背こそ低いが、鍛え上げられたその肉体はとても軽いとは言えないと思うが。
しかし突然の奇行にも臨機応変に対応したアスタの判断力と実行力を褒め讃えたい。すかさず魔導書から引き抜いた剣で魔法を斬ったアスタは、少女諸共落ちてきた。
(それよりあの子、王族……？)
水に濡れて更に艶やかに見えるその銀髪と、頭の先からつま先に至るまで、身につけているものは高価なものばかり。王族なのに何故まともに魔力をコントロールできないのか……いや、Aが目をつけたのはそこじゃなかった。フィンラルの空間魔法のお陰で落下死を免れた少女の元へ駆け寄ったAは彼女に手を差し伸べた。
｢あなた、すごい魔力持ってるんだね｣
｢…………へ？｣
王族の魔道士が生まれ持つ魔力量は一般人のそれとは桁違い。
そんな中でも彼女の魔力はそれ以上……Aにも匹敵する程だった。
｢そーそー！俺魔力ないから羨ましいぜ！特訓して自在に操れるようになればお前無敵だな！｣
｢何だ、魔力がコントロールできなかっただけかよ。早く言えよ出来損ない王族！俺たちは出来損ない集団“黒の暴牛”だぞ？テメーの欠点ごときどうってことねえんだよバカタレ｣
出来損ないだと蔑まれ生きてきた。そんな少女が見たのは、差し出されたAの優しい手と、自分を責めるでもなく、受け入れてくれる仲間たちの姿。少女は頬を赤らめ、俯いたまま、その手を取った。
｢…………よろしくお願いします｣
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2022年3月13日 10時
