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牙を剥く猛獣たちを前に、Aは目をきらきら輝かせた。
バネッサとチャーミーがドン引いているのに目もくれず、更には｢絶対友達になってやる！｣という謎の決意まで生まれていた。
そんな姿を見て、やっぱりここに来るのはまともな魔道士じゃなかったと顔を見合わせる女性陣。……この2人とて人のことを言えるほどまともではないが。寧ろAの狂気じみた動物マニアが可愛らしく見えてしまうほど、“黒の暴牛”にはヤバくて野蛮な人が集まっている。
猛獣部屋を後にした後、最高級の癒しの余韻を噛み締めながら、Aはバネッサたちに話しかけた。
｢この部屋見て聞くのもなんですけど、ここってペット可です？｣
｢もう、ここは何でもありの“黒の暴牛”団よ？ペットでも猛獣でも使い魔でも好きなの飼っちゃいなさい｣
二日酔いで吐き始めた時は焦ったが、こうして素面だと気さくで明るい人格だった。きっと頼れるみんなのお姉さん的存在なのだろう。
……しかし、ウインクと共にかけられたバネッサの言葉の中に、聞きなれないワードがあった。
｢使い魔……？｣
｢あら知らないの？まぁ使い魔なんて今どきいないし珍しいものねえ｣
｢使い魔っていうのは、魔法使いが連れてる動物のこと！ほら、魔女の箒に黒猫が乗ってたりするでしょ？ああいうの。昔絵本で見なかった？｣
｢召喚魔法と違うんですか？｣
｢要領は一緒だけど、それだと魔力食うでしょ？使い魔はもともと魔力を持ってるの。だから戦ったりできる子もいるみたいよ｣
魔力を持った動物……なる物がいるとは聞いたことがあったが、運良くその動物に戦えるだけの魔力が備わっていて、Aの魔法と併せればかなりのパワーアップが見込める。もし機会があれば、是非とも仲良くなってみたいものだ。
(知らないことばっかりだ………)
ずっと故郷で魔法を伸ばし続けてきた。そして魔法騎士団に入ったことで改めて触れた魔法の世界は、思っていたよりずっとずっと広大だった。知らないことだらけだけど、恐怖は自然と消えていた。“黒の暴牛”の仲間たちとなら怖くない。この人たちと上を目指したいと、気づかないうちに思うようになっていた。
｢でも使い魔が強けりゃ強いほど手懐けるのも難しいって言うし、変に考えず気楽に行きましょ？｣
｢そーそー！まずは腹ごしらえから！らー！｣
｢───────はいっ！｣
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2022年3月13日 10時
