1カラットの雫【江口拓也】

第10話 ページ10

『…この前？』

良平さん達が、思い出そうとしている彼女をみる

『うーん？』

「ほら！この間の…」

『あっ！！』

「思い出した？」

再び、良平さん達が彼女をみる

『分かった！この間の…』

「うんうん！」

『タクシーで…』

「そうそう！」

『…泥酔して運転手さんに絡んでて、無理やり押し込んだ時の人？』

「うん！！それ…って待って待って違う！」

人違いだ！！

「おい、えぐそんなことしたの？」

酒は飲んでも飲まれるなって言ったろ〜って良平さんが睨む

「違いますよ！人違い！それじゃなくて…」

『あー！あの時の！』

「そう！そっち！たぶん！」

『タクシーで！』

「そう！それ！」

『3000円足りなくて貸した時の方！？』

「…ちがーーう！！」

「…江口くん、いくらお金が無いからって…」

「やめてください？違いますからね、信彦さん！お金はないが！それはしない」

「じゃあ！お前何したってんだよ」

「だから…」

仕方なくあのことを話すことに

『へぇー』

「へぇーってお前のことだぞ」

そう言って、良平さんが
東雲さんの頭をチョップする

『痛いですよ』
「大丈夫、2割」
『2割って…割とまあまあ』

そんな会話を見ながらふと思う

良平さんと仲良いようだけど…
最近会ったって感じじゃなさそう
そう例えるなら…

「良平さんと東雲さんって前からの知り合いなんですか？」

気がついたら聞いていた

「まぁね」 『ええ』

…？あれ、なんかまずかったか？

そう答えた2人の会話の中に、
不思議な間があった

「羽衣とは長ーい付き合いだから。
家族みたいなもん」

『そうですね〜』

へぇーそんな人、良平さんにいたんだ
まぁ、良平さんにならありえないって
話じゃないけど


そんなことを思いながらビールを飲んだ

その後はくだらない話に花を咲かせ
あっという間にサヨナラの時間に

「んじゃ〜帰っか」
『そうですね…わ！こんな時間！』

「あれ、羽衣ちゃん歩き？」
『そうなんですよ。あ、でも家近いんで』

「羽衣、泊めて〜」

そう話す良平さんをみんなでギョッとしてみる

『明日早いでしょう〜』

そういって抱きつこうとする良平グッと押した

酒に酔ってるとはいえ…
距離感近くない！？

そう思いながら見ていた

…あれ？

なんだか彼女を見ていると
不思議な気持ちになる
そう、例えるなら違和感だ

最初から感じていた謎の違和感

「えぐー帰るよー」

「あ、はい！今行きます」

…うーん、なんだろう、これは

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