検索窓
今日:17 hit、昨日:3 hit、合計:52,778 hit

第47話 ページ47

貴女side

お腹いっぱい食べて、みんなでスタジオに戻る最中、スマホが急に鳴りだした

…誰だろう

そう思い、スマホの画面を見ると、急に指がヒヤリと冷たくなる

『……』

「羽衣?どうした?」

私の様子がおかしい事に気づいた良平さんは、そう声をかけた


見慣れた番号

ふぅ、と1度息を吐く

「東雲さん?」

江口さんも私の様子を心配そうに見つめた


大丈夫、大丈夫だよ

そう言い聞かせて、口に溜まる唾液をゴクリと飲み込んだ

そしてスマホ画面にうつる受話器マークを押した

『……もしもし』

少しだけ電話に出る声が震えた

良平さんは、そんな私を見て、誰からかかってきたのか理解したようで黙り込む


『……もしもし』

向こう側が無言なため、もう一度声をかける

「……私だ」

電話越しから、低い声が響いた

久しぶりに聞く声

ドキドキと心臓がなる

緊張から来るものか、はたまた恐怖か


『…久しぶりです』

『……お父さん』

親子の会話にしてはぎこちない会話文

私の後ろで流れる横断歩道の青信号の音を聴きながら返ってくる返事を待つ

私のお父さんと呼んだ声を聞いて、江口さんは少しだけ驚いた顔をした

「…話がある」

文章にしたら短い文
そんな言葉を電話を通して冷たい声で私の耳に届く

『…そう』

「だから、帰ってきなさい」

「…待ってる」

少し呆れたようにそう告げると、ブツリと携帯が切れる

暫く何も聞こえなくなった電話を耳に押し当てていた


すると────────


「羽衣」

そういって良平さんが、私の抑えている手の上から手を握った

「……大丈夫」

大丈夫か、ではなく、大丈夫

そう言って良平さんは、震える私の手をそっと握り続けた

「甘いもの、やっぱ食いに行くか?」

そうニカッと八重歯を見せながら話す良平さんを見て、ようやく意識が戻ってきた気がした

……灰色だった

あの人の声を聞いただけで、辺りが灰色になる

未だ震える手を良平さんは離さずにいてくれた

……こんなにも人がいる街中で

本当は嫌なくせに
本当はこういうことは苦手なくせに

良平さんは私の震えが止まるまで、私の手を離すことは無かった


暫くして、黙っていた江口さんが心配そうに声をかけた 「大丈夫、東雲さん?」

本当に優しい人達だ

……嗚呼、あったかい

2人がいてくれるだけで
そばに居てくれるだけで

…私は前に進めるから

『大丈夫です、ありがとう』

「羽衣、あのさ…『大丈夫だよ、私』」

『私、逃げないよ』

第48話→←第46話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (24 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
109人がお気に入り
設定タグ:声優 , 江口拓也 , 木村良平   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

- サチさん» サチさん、コメントありがとうございます。今後どうなるか、続きも読んでくださると嬉しいです。3人の関係を沢山出せたらな、と。 (2021年3月18日 20時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 更新お疲れ様です!これまた、雲行きの怪しい感じなのでしょうか…主人公ちゃんが傷つかないことを祈ります。そして、良平さんと江口さん…どうなるんでしょうか。楽しみです! (2021年3月17日 0時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
- サチさん» サチさん、いつもコメントありがとうございます。返信遅くなりすみません。均等に登場できるよう頑張りますね。感想、いつも楽しく拝見させていただいてます。 (2021年3月7日 15時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 更新お疲れ様です!…すごく良いです。江口さんとの会話も。でも、良平さんが気になる… (2021年3月6日 0時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
- サチさん» サチさん、いつもありがとうございます。ご返信遅くなりすみません。大体のオチは決めてありますが、少し変わるかもしれないですので引き続きどうなるか見ていただけたらなと思います(*^^*) (2021年3月3日 7時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2021年1月28日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。