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第42話 ページ42

『それだけって…』

「俺別になんとも思ってな…『そうじゃなくて!』」

『江口さんがなんとも思ってなくても!私には関係あって…』

えぇ…よく分からん

『いや、だって…』

『…どう向き合っていいか分からなくて』

「向き合う?」

『…涙なんて…出たの…久しぶりで』

『止め方も分からなくて…』

『そもそも!江口さんが!!』

…えぇ、やっぱり俺なの!?

「俺が?」

『江口さんが!!』

そう珍しく大きな声を出せば、言葉につまる彼女

次の言葉が出るまで待つ

『江口さんが…』

「うん」

『…私の欲しい言葉ばかりくれるから…』

『私のずっと欲しかったものをくれるから…』

そう言うと足元を見る彼女

『…こんなのどう向き合っていいか分からなくて…』

彼女は自分を自分で抱きしめた

そう言う彼女は少しだけ震えていて、いつもの凛とした声とは違う、か細い声でつぶやく

『…江口さんは…何も悪くないんです』

『…私がどう顔合わせていいか分からなくて』

ぽつりぽつりと零れるのは彼女の弱い部分で

初めてだと思った

自分の感情をこんなにぶつけて来るのは
あって確かに間もないけど
こんな彼女を見るのは初めてだった

彼女はまた眉を8の字にして3回瞬きをする

─────嗚呼、そうか

彼女は、本当にどうしたらいいのか分からないんだ

言われたままに生きてきて、自分の感情を押し込めて生きてきて

だからこそ、今もれだした本当の自分の気持ちにどうしたらいいか分からずに戸惑ってるんだ

『…江口さんは、悪くないの…私が…』

「うん、分かった」

『…え?』


彼女は今向き合おうとしてるんだ
自分というものに

彼女が向き合おうとしているなら…

彼女が新しい1歩を踏み出そうとしているなら…


─────俺が彼女の道を作ろう

「東雲さんの気持ちはよく分かった」

『…』

「東雲さんさ」

「俺は東雲さんとご飯行くの好き」

『…え』

「だから、すげぇお昼楽しみ」

「東雲さんは?」

「東雲さんは、俺と行くの嫌?」

彼女に合わせて少しだけ屈んで
彼女の宝石のような目を見つめた

──俺が彼女の手をひこう

『…私は』

「…うん」

『…嫌じゃ…ない』

『江口さんともっと話したい。ご飯も沢山行きたい』

そう顔を上げた

『江口さんと…食事するの…楽しみです』

色素が薄い彼女の茶色い瞳がきらりと光る

『江口さんと…またご飯行きたい』

そう彼女は小さな1歩を踏み出した

それは、俺が見た初めての彼女の本音だった

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設定タグ:声優 , 江口拓也 , 木村良平   
作品ジャンル:恋愛
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- サチさん» サチさん、コメントありがとうございます。今後どうなるか、続きも読んでくださると嬉しいです。3人の関係を沢山出せたらな、と。 (2021年3月18日 20時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 更新お疲れ様です!これまた、雲行きの怪しい感じなのでしょうか…主人公ちゃんが傷つかないことを祈ります。そして、良平さんと江口さん…どうなるんでしょうか。楽しみです! (2021年3月17日 0時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
- サチさん» サチさん、いつもコメントありがとうございます。返信遅くなりすみません。均等に登場できるよう頑張りますね。感想、いつも楽しく拝見させていただいてます。 (2021年3月7日 15時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 更新お疲れ様です!…すごく良いです。江口さんとの会話も。でも、良平さんが気になる… (2021年3月6日 0時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
- サチさん» サチさん、いつもありがとうございます。ご返信遅くなりすみません。大体のオチは決めてありますが、少し変わるかもしれないですので引き続きどうなるか見ていただけたらなと思います(*^^*) (2021年3月3日 7時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年1月28日 23時

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