第36話 ページ36
貴女side
…泣き方なんて忘れてしまった
…笑い方なんて忘れてしまった
演技ではできるのに、どれが本当の私か分からない 私はいつだって空っぽだった
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ふと、江口さんと食事をしている時に、“あの事”を思い出した
それを軽く話すと彼は「遅めの反抗期だ！」って笑って話す
想像してた返答とは違うものが返ってきて私も思わず『変な人』って笑ってしまった
…本当に不思議な人
そして次に、私に彼はあの人とまた仲良くできるよ、とそう言った
…本当は分かってた
親を卵が包んでるんじゃないって
…本当は分かってた
これは私の八つ当たりで、怒りの対象をあの人にしてまたやり直そうとしていたことを
…本当は分かってた
私に、自分に対しての怒りだということに
それもこれも全部江口さんにあっさり見破られてしまった
そして彼は、私の頭を優しく撫でる
それは私と違って大きな手で
それは私と違ってゴツゴツした男性の手で
忘れかけてた温もりを思い出すのは充分だった
そんな彼の手は、少し冷え性なのか冷たくて、でもとても優しいく壊れ物を扱うかのように撫でた
「…頑張ったね」
そう彼は言った
…お願いだから優しくしないで欲しい
…だって涙は出ないのだから
「大丈夫、これからは好きにしたらいいさ」
…お願いだから、私の欲しい言葉を言わないで欲しい
…だって耐えられなくなってしまうから
「遅めの反抗期だもんね」
最後にそう彼は和ませるように言った
気がつくと私はぽろぽろと目から雫が零れ落ちた
乾ききっていたはずなのに
忘れていたはずなのに
まるでスイッチが入ったかのように涙が溢れてきた
そんな私を彼は優しい目をして見つめてそっとメニュー表で隠してくれた
…涙の止め方ってどうやるんだっけ
分からない、分からない…
『…ごめんなさい…』と私は小さい声で呟いた
それでも彼は、子供のようにぽろぽろと泣き出した私をみても、優しく包むこむように見守っていた
…彼の触れた指先は、少し冷たくて
…でもその分、すごく温かくて
私がずっと欲しかった言葉をあっさりとくれてしまったのだ
…おかしいな
泣き方なんて分からなかったのに
彼の前では泣いてしまったのだから
最後に彼が頼んだ食後のデザートのあんみつは
ほんのり甘くて、少しだけ涙の味がした
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雅 - サチさん» サチさん、コメントありがとうございます。今後どうなるか、続きも読んでくださると嬉しいです。3人の関係を沢山出せたらな、と。 (2021年3月18日 20時) (
レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 更新お疲れ様です！これまた、雲行きの怪しい感じなのでしょうか…主人公ちゃんが傷つかないことを祈ります。そして、良平さんと江口さん…どうなるんでしょうか。楽しみです！ (2021年3月17日 0時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、いつもコメントありがとうございます。返信遅くなりすみません。均等に登場できるよう頑張りますね。感想、いつも楽しく拝見させていただいてます。 (2021年3月7日 15時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 更新お疲れ様です！…すごく良いです。江口さんとの会話も。でも、良平さんが気になる… (2021年3月6日 0時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、いつもありがとうございます。ご返信遅くなりすみません。大体のオチは決めてありますが、少し変わるかもしれないですので引き続きどうなるか見ていただけたらなと思います(*^^*) (2021年3月3日 7時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雅 | 作成日時：2021年1月28日 23時
