第32話 ページ32
『髪とか染めてみようかな！派手なやつに！』
「やっちゃえ、やっちゃえ〜！俺なんてしょっちゅう変えてる」
そんな冗談を交えながら、お互いに笑い合う
しばらく笑いあって、俺は真面目な顔で口を開く
「…東雲さん」
『はい？』
「親子丼、美味しかった？」
『はい！とっても！』
「じゃあ、大丈夫だよ」
『…え？』
「大丈夫、きっとお父さんとも仲良くなれるよ」
『…』
「そりゃ、急には無理だけどさ。いや、酷いことだと思うし、気持ちはわかるよ？分かるけど…」
『…うん』
「東雲さん、お芝居好き？」
『…え、お芝居ですか？』
「うん、そう」
『…好きです』
「じゃ、お父さんのことは？」
『……』
「じゃあ、質問変えるね。東雲さんに、お芝居やるきっかけにしてくれたのは誰？」
『…それは…』
暫くの沈黙が続いた
俺は少しぬるくなった珈琲を1口流し込む
もう、彼女だって答えは出てるだろう
「東雲さんさー」
『はい…』
「卵が親を包んでるって言ってたけど」
『…？』
「その卵は、親がいないと包むことさえ出来ないよ」
そう伝えると、彼女は視線を湯のみのお茶を見つめたまま小さい声で『そう、ですね…』と呟いた
俺は黙って向かいに座る彼女にそっと手を伸ばし、軽く頭をぽんぽんと撫でた
…小さくて女の子の頭だった
…俺とは全く別物で
ふわりと香るシャンプーの香り
俺とは違って甘くて女性らしい香り
こんなに小さくて、俺とは全く違うのに
彼女はとっても大きなものを抱えて今まで来たんだと思う とっても立派で、俺とは比べ物にならないくらいしっかりしてて
「東雲さん、頑張ったね」
『……あのっ…あんまり優しくされると…私っ…』
「大丈夫、これからは好きにしたらいいさ」
「…っ…江口さ…」
「…だって、遅めの反抗期だもんね」
『……っ…』
そう言って、俺も下手くそだけど精一杯彼女に笑いかけた 彼女の分も
下を向いて顔をあげなかった彼女は、少しだけ肩を震わせながらぽろりと目から宝石のような雫を落とした
「…」
『…っ…』
「…まだ時間あるし、デザート食べよっか。奢るよー！何にするー？えー悩むねー」
そう、態とらしく少しばかり大きな声で言って、俺はメニュー表を開いて彼女に見せる
窓際の席
…メニュー表で彼女を隠して
良かった、昼どき過ぎてて
良かった、泣き方は忘れてなくて
俺は、『…ごめんなさい』と呟く彼女をそっと見守った その雫が落ちきってしまうまで
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雅 - サチさん» サチさん、コメントありがとうございます。今後どうなるか、続きも読んでくださると嬉しいです。3人の関係を沢山出せたらな、と。 (2021年3月18日 20時) (
レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 更新お疲れ様です！これまた、雲行きの怪しい感じなのでしょうか…主人公ちゃんが傷つかないことを祈ります。そして、良平さんと江口さん…どうなるんでしょうか。楽しみです！ (2021年3月17日 0時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、いつもコメントありがとうございます。返信遅くなりすみません。均等に登場できるよう頑張りますね。感想、いつも楽しく拝見させていただいてます。 (2021年3月7日 15時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 更新お疲れ様です！…すごく良いです。江口さんとの会話も。でも、良平さんが気になる… (2021年3月6日 0時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、いつもありがとうございます。ご返信遅くなりすみません。大体のオチは決めてありますが、少し変わるかもしれないですので引き続きどうなるか見ていただけたらなと思います(*^^*) (2021年3月3日 7時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雅 | 作成日時：2021年1月28日 23時
