1カラットの雫【江口拓也】

第24話 ページ24

収録が終わり、スタジオを見渡す

俺が見渡すのは訳があった


…たまには食事でも誘うか

そう思って俺は羽衣の姿を探す

あれ〜？今日同じ収録日だったから来てるはずなんだけどな〜

そんなことを思っていると、スタッフに声をかけられた

「あれ〜？良平さん、どうしたんすか？」

「おー、あー、いや」

なんて答えればいいか分からず少し吃る

「あのさ、羽衣見なかった？」

「え？東雲さんですか？」

うーんと考えると暫くして

「あー！さっき江口さんと出ていかれましたよ！珍しいですね、あの二人」


そう答えた


胸が何となく針で突っつかれたようにチクリと痛む

「あー、そうなんだ。わりーね、ありがとう」

そう伝え、そのスタッフと別れた


…羽衣が？えぐと？

なんでまた


あの二人、仲良かったっけ？

そんなことを思いながら、仕方なく別なやつを誘おうとスマホを手にした───────


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

次の日

「あのさ、羽衣は？」

リベンジでまた食事に誘おうとしたが、どうやら今日も居ないみたい

仕方ないからまた出直すことにした

また、次の時も、そのまた次の時も…
いーつも、あいつはいない

…なんだか昔みたいだな

なんて古い思い出にひたっていた

…いつもあいつと俺はすれ違ってばかりだ

そんなことを思いながら、スタジオの廊下の角を曲がった瞬間

見覚えのある声が耳にはいった

「東雲さーん」

なんとも気の抜けるような穏やかな声と
聞き慣れた凛とした声

『…はい？』

…羽衣だ！！

そう思って声のした方へ向かうと、そこにはえぐがいた

「おー、えぐ…」

そう声をかけようとした時、

「ご飯行くよ〜」

まだ返事をしていない彼女連れてご飯へと誘っていた


…はぁ！？なんで！？あいつが自ら！？

まず、あのえぐから誘っていたことに衝撃を覚えて、思わず声を失う

日頃…というか昔から仕事以外、酒はいらない限り静かなあいつが自分から食事に誘う？

「…有り得ない」

いや、別に男女の友達をありえないって言ってる訳じゃないし、友情もアリだと俺は思うけど…


昔からどっちも知ってるからこそ、なんで！？と言う気持ちが強い

「…あいつら、仲良かったんだ」

巡り合わせたのは俺で
どっちも昔からよく知っていて
どっちも大好きな二人で…

「…まぁ、食事だしな」

そう自分に言い聞かせて、胸のざわめきを静ませていた

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