第15話 ページ15
貴女side
…不思議な人
それが江口さんの第一印象
同じ現場だったから最初はそれだけの事
何回からチラチラ現場で見られていた気がしたけど、どうやらそれは以前助けたことがあったから
身長が高くて、眼鏡をかけていて
とても整った顔をしていて
そしてどこか人より1歩後ろにいる
彼の第一印象
彼のことはそれはそれは知っていた
だって有名ですもの。
人気で明るいイメージだったけど
現場でお会いしたら少しばかり
雰囲気が違ってた
……まぁ、私には関係ないことで
ビジネスパートナー
それ以上でもそれ以下でもなかった
ただ、この世界に再び戻ってこれて嬉しかった
スタジオの香り 本番のピリリとした緊張感
……大好きなこの感じ
……本当に嬉しかった
演技は好き
……だって他の誰かになれるから
自分ではない自分でいられるから
無でいられた 何も考えずに
役だけを考えて それだけでよかったから───
「ねぇ、」
「…何で“本当に笑わないの？”」
───言葉が思いつかなかった
……あれ
笑うって……どうやるんだっけ
6年前から笑うことが出来なくなった
笑い方を忘れてしまった
…きっとこれは私がしてきた罪なのね
たくさんの仮面をつけてきて
気がついたら本当の自分が分からなくなっていた
だから、江口さんにそう言われて
とてもドキッとした
嗚呼、この人は見抜いてしまうんだな、って
私のことをしっかりと見つめたのは
この時だけだったのに
しっかりと目があったのも
この時だけだったのに
会ったばかりの彼にすぐに見抜かれてしまって
まるで私の心は抜け殻状態
なんだか少し気まずい雰囲気になってしまって
まだ少し距離があるのに嘘をついた
『ただいま』
誰もいない部屋に声をかける
そのまま着ていた服を脱ぎお風呂場へ
お湯を出すと、一気に風呂場の鏡がくもる
そのくもりにシャワーのお湯をかけ
鏡にうつる私を見る
小さく笑顔をひとつ
笑えてる……よね
すぐに鏡はくもっていく
『……大丈夫、大丈夫』
ふと、あの6年前を思い出す
『…なんであんなこと聞いたんだろう』
「そうだね、疲れるけど好きだから」
そう彼は言った
嗚呼、この人は私と違うってすぐに悟った
少しだけ、少しだけ……
彼のメガネのレンズ越しに映る世界が
私の昔見ていた世界に似てる気がして
ほんの少しの心配と、ほんの少しの嬉しさ
ｺﾎﾟﾎﾟと排水溝が音を立てる
…私は、彼が聞いてきた言葉が
頭の中にずっと残っていた
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雅 - サチさん» サチさん、コメントありがとうございます。今後どうなるか、続きも読んでくださると嬉しいです。3人の関係を沢山出せたらな、と。 (2021年3月18日 20時) (
レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 更新お疲れ様です！これまた、雲行きの怪しい感じなのでしょうか…主人公ちゃんが傷つかないことを祈ります。そして、良平さんと江口さん…どうなるんでしょうか。楽しみです！ (2021年3月17日 0時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、いつもコメントありがとうございます。返信遅くなりすみません。均等に登場できるよう頑張りますね。感想、いつも楽しく拝見させていただいてます。 (2021年3月7日 15時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 更新お疲れ様です！…すごく良いです。江口さんとの会話も。でも、良平さんが気になる… (2021年3月6日 0時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、いつもありがとうございます。ご返信遅くなりすみません。大体のオチは決めてありますが、少し変わるかもしれないですので引き続きどうなるか見ていただけたらなと思います(*^^*) (2021年3月3日 7時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雅 | 作成日時：2021年1月28日 23時
