桜散る夜、また君に逢えたら。 (ページ6)

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五話ページ6

ふぅ、と息をついて投げ飛ばすために捨てた鞄を拾おうとすると、トン、と背中に何かが当たった。振り返るとそこには先ほどの子供が水木の鞄を両手で持って差し出している。

「拾ってくれたのか。」

「･･････。」

子供は一言も発さなかった。俯いているため前髪で顔が見えない。水木が鞄を受け取ると子供の頭に手を伸ばした。

「っ、！？」

が、その瞬間、子供が勢いよく後ろに下がった。顔が上がり、瞳が見える。吸い込まれそうなほど澄んだその瞳に、水木は思わず息を呑んだ。

「･･････お前、綺麗な目してるな。外国人か？その瞳は父親？それとも母親譲り？」

「･･････。」

何も話さない。はくはくと唇を動かしてはいるが、瞳は恐怖の色を持って小さく揺れている。怯えさせているのがわかった水木は鞄を受け取り、小さく笑う。

「すまん。怖がらせたな。じゃあ、僕は行くよ。」

踵を返して商店街へ出ようと歩き出す。が、その足は止まることとなった。

「･･････！」

子供が、水木のスーツの裾を掴んだからだ。
離すまいと強めに掴んできた子供に、思わず振り返る。水木が立ち止まってくれたことがわかると、子供はしゃがみ込んで地面に人差し指を押し付けた。

「？なにして、･･････」

水木が視線を地面に向ける。
そして目を見開いた。

「“ありがとう”」