八話 ページ31
＿＿＿ガシャン！！！！
その時、襖の方から何かが落ちる音。
二人が視線をそちらに向けた瞬間、子供の体は勢いよく引っ張られ、何かに包まれた。
「っ･･････、！！」
振動が収まると、子供は恐る恐る目を開く。部屋の中に入ってくる光が眩しくて、しばらく焦点が合わなかった。翠玉が最初に捉えたのは右目の三白眼を大きくしている白髪の男。しかし先ほどまで目の前に座っていたというのに、今はこんなにも離れている。理解が追いつかないまま、子供はしばらく白髪を見つめていた。
「はっ、はぁっ･･････！！」
次に頭へ入ってきたのは、呼吸音。荒々しい音の中に聞き覚えのある声色が確かに混じっていた。ゆっくりと上を向くと、見えたのは片目にある傷。水木だ。
「み、ずき･･････？」
白髪の男が、水木と呼ぶ。その声を聞いた途端、体が少し圧迫された。何かに包まれているような感覚は、どうやら水木の腕の中にいるからだったらしい。苦しいくらいに力がこもった腕を見つめていると、水木は白髪の男に大声を上げた。
「お前は誰だ！？！？何故この部屋にいる！？！？」
先ほど子供にかけた声色とは似ても似つかない荒々しい怒声。耳をつんざくような声量に思わず子供の体が勢いよく跳ねた。
「水木･･････お主、まさか視えておるのか、？」
白髪の男はそう溢すと、己の手のひらをじっと見つめた。どういうことだ。今まで魂の姿が水木に視えることなど一度もなかった。それなのに今は、魂の姿が視えていて、逆に目玉姿の方が視えていないではないか。一人唖然としていると、水木はさらに腕に力を込めた。
「どこから入ってきた！？！？まさか、この子供が狙いか！？！？」
「水木、儂は、」
「何故僕の名前を知ってるのかは知らないが、僕はお前のことなんか知らない！！！！」
そう。知らないのだ。
片目を隠して、藍色の着物を着た男なんて。
「知らない、！！」
一度だって、会った記憶などない。
「しらな･･････っ、」
知らない、のに。
「水木･･････？」
何故、涙が溢れてくるのだろう。
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作者名：優咲ユウ | 作成日時：2024年1月28日 21時
