桜散る夜、また君に逢えたら。 (ページ4)

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三話ページ4

会社を出ると辺りはまだ少し明るかった。夏も終わり半ば。そろそろ肌寒くなってきてもおかしくないと言うのに、それを感じさせないほどじっとりとした暑さが体に纏わりつく。

「(どうせなら、何か土産でも買っていくか。)」

平日の昼間は大抵、鬼太郎を母親に任せている。墓の中から産まれた子供であるため、始めこそ母親は鬼太郎を気味悪がっていた。しかし、最近はまるで自分に2人目の息子が出来たかのように可愛がっている。暇さえあれば鬼太郎を抱き、ヨシヨシとあやしているお袋の姿を見ると自分もこうされていたのかと思い、少しむず痒くなるが。

「(夏とは言え、もうそろそろ暗くなる。近道するか。)」

商店街に行くために細い小道に入った。煙草を咥え、マッチを探して懐を探る。

「･･････あ、」

そうだ。マッチは昼吸った時に切れたんだった。チッ、と小さく舌打ちをして煙草を口から離そうとすると、

「おい！！！止まれクソ餓鬼ィ！！！」

前方から怒声が聞こえた。顔を上げるのと同時に何かが水木の横を通り過ぎる。その直前、すれ違ったものと目が合った。

「･･････！」

その一瞬、時が止まったように感じた。
だって、そいつの瞳は。

まるで、翠玉のようだったから。