桜散る夜、また君に逢えたら。 (ページ30)

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七話ページ30

「"視えて"おるな。」

「･･････。」

子供は何も話さない。じっ、と見つめる翠玉はいつもと変わりなく透き通っている。

「お主、儂の魂の形がわかるのじゃろう。目玉ではなく人間の姿が。」

沈黙が続く。声をかけても口を開かない子供。警戒しているのか、それとも見定めているのか。白髪は小さくため息をつくと、子供の目の前に胡座をかいた。

「そう警戒せんでいい。儂は何もせんよ。」

両手をひらひらさせて笑う白髪の男に、子供は少し肩の力を抜く。まだ、警戒されているものの、鬼太郎が握っている手を離さないところや、何があっても鬼太郎を庇うことのできる位置に座っているところを見て、白髪は嬉しそうに目を細めた。

「倅の･･････鬼太郎の面倒を見ていてくれたんじゃな。ありがとう。」

白髪の言葉に、子供が首を横に振る。「お礼を言われることはしていない」と主張する子供に、「ああ、なんて優しい子だろう」と白髪は思った。見る限りまだ十もいかない子供だ。けれど謙虚で大人びて、謙遜を使うことができてしまうことになんだか寂しさを覚える。

「優しい子じゃ。」

それがなんだか愛おしくて、悲しくて。たくさん褒めてやりたくなった。これがいつか、妻が言っていた「愛おしい」なのだと思う。白髪は傷だらけの子供にゆっくりと手のひらを伸ばした。その行き先は、小さく丸い頭の上に。優しさを帯びて伸ばされた手のひらを、子供はじっと見つめていた。