四話 ページ27
「うっ、うわあぁぁぁん!!!」
どのくらいそうしていただろう。この沈黙を破ったのは、腕に抱かれていた鬼太郎だった。張り詰めた空気に怯えたのか、固まっていた水木にしがみついて泣き始める。
「っ、鬼太郎。」
我に帰った水木は鬼太郎の背中をあやして泣き止ませようとした。その光景を見ていた子供もまたゆっくりと翠玉の鋭さを弱める。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
鬼太郎が泣き止むと、再び水木の青眼と子供の翠玉が交わった。しかし先ほどのような張り詰めた空気ではなく、まるで時が止まったかのように静かな時間が流れる。水木は鬼太郎を抱いたまま、子供の目の前にしゃがみ込んだ。子供は少し体を跳ねさせたが、翠玉はじっ、と水木を捉えていて。
「体、大丈夫か。」
「・・・・・・。」
翠玉の鋭さが、また一つ緩む。
「・・・・・・怖がらせたな。」
「っ、」
子供は、翠玉を大きくして頭を横に振った。
それを見た水木はゆっくりと手のひらを差し出し、子供の翠玉に視線を合わせる。
「・・・・・・傷、手当てさせてほしい。」
子供の小さな右手から溢れる血液。いきなり体を動かしたからか傷口が開いてしまい、じわりと着ていた服に染み込んでいた。パタリ、と手のひらからこぼれ落ちたものは、一つ、また一つと畳を赤く染めていく。
「名前、言ってなかったな。水木だ。久しぶり。」
そう言って、笑いかける。子供はしばらく水木の顔をを見つめていたが、瞬きを数回すると、震えながら差し出された手を取った。
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作者名:優咲ユウ | 作成日時:2024年1月28日 21時