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二話 ページ25

「(逃げなきゃ、)」






痛みの中、子供の頭の中はそれで覆い尽くされた。手で庇いながらなんとか体を這いずって襖に近づく。途端、再び激痛が体に走った。






「っ〜〜〜、!!!」






右手がぬるりと生暖かい何かで濡れる。手のひらを見れば真っ赤な鮮血で完全に染められていた。まるで蛙が潰れたかのような呻き声を出して傷口を押さえる。が、止まること叶わず、手のひらから溢れた鮮血は畳の上に溢れ落ちていった。






「!」






その時、目の前の襖から人の気配。子供は激痛に悶える中、必死に思考を巡らせた。






「(足音は一つ。でも呼吸音は二つ。足音の間隔から元服済みの男。身長は160後半。擦れる音からして服装は軽装。つまり、)」






逃げきれない。






ああダメだ。どうしたって勝ち目がないことを悟り、子供は絶望の淵へと立たされた。足音が近づいてくる。呼吸が、荒くなる。






あと少し、あと数歩。

そして、その足音は。






襖の目の前で、鳴り止んだ。

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作者名:優咲ユウ | 作成日時:2024年1月28日 21時

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