桜散る夜、また君に逢えたら。 (ページ23)

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第三幕　子供ページ23

揺れる。

素足のまま、無理やり動かして歩く。

歪む。

本来なら体内を巡回しているものが、だらだらとただひたすらに流れ落ちていくせいで視界がぼやける。

軋む。

胸が、背中が、頭が。生きてきた中で一番卑劣で醜い悲鳴をあげて主張する。

必死に、歩いて、歩いて、歩いてきた。

でももう、限界らしい。

街灯の真下。光が当たる場所で体が力尽きた。ここは確か、いつの日か親切な男性に食べ物を恵んでもらった場所だ。いつのまにか、こんなところまで歩いてきてしまったらしい。

じっとりと重い暑さが体にのしかかる。

この場所に、無意識に足が向いてしまったのは心のどこかであの男性を当てにしてしまっていたからだろうか。そうだとしたら、なんて自分は勝手で傲慢な餓鬼だろう。助けたところでなんの得もない餓鬼。いまさら希望もないというのに。

･･････お腹減ったな。

眠い。疲れた。死に際というのは思っていたより呆気ないのかもしれない。こんなにも朦朧としてしまうのなら見送りなんてものも本来必要ないのかもしれないなと思う。

でも、最期となるとやはり少し名残惜しい。

どうせなら。

「(もう一度だけ、『こっぺぱん』を口にしてみたかった。)」

もう、遅い。

最期に覚えていたのは、体が浮かび上がるような感覚だけだった。