ニ話 ページ3
水木の言葉を聞いた途端、項垂れるように突っ伏した望月。そんな望月を見て水木は不服そうに頭を軽く叩いた。
「だって水木さん仕事人間ですし、結婚しちゃったら俺と飲みに行く頻度減るじゃないですか。」
「お前は僕に奢って貰いたいだけだろ。」
「あ、バレました?」
「何年お前といると思ってんだ。コイツめ。」
机に突っ伏していた望月の頭をかき混ぜる。やめて下さいと言う割に嬉しそうにする望月を見て、水木も嬉しそうに目を細めた。
「しかし生まれてこの方、赤ん坊と接する機会なんかなかったから、うまくいかないことが多くてな・・・・・・おかげで毎日寝不足だ・・・・・・」
「ああ、なるほど。そう言うことでしたか。」
「最近は夜泣きが酷いし、はいはいもし始めたから目が離せなくて・・・・・・」
「・・・・・・お疲れ様っす。」
今度は水木の方が項垂れてしまった。そんな水木の背中を望月がさすさすとさする。
「でも、なんか面白いっすね。水木さんがしっかり父親してるなんて。」
「しっかり、なぁ・・・・・・」
「ちゃんと父親できてますよ。赤ん坊は泣くのが仕事だし、デカくなったら接点も少なくなるんだから、今のうちにたくさん抱いたりしてた方がいいっすよ。」
「・・・・・・ああ。そーだな。」
にこにことする望月をよそ目に、湯呑みに残っていたお茶を流し込む。デスクに湯呑みを置いて、さっきまで見ていた書類を取ろうとするとすかさず望月が書類をぶん取った。
「・・・・・・おい。」
「水木さん。これは俺が片付けとくんで今日はもう帰って下さい。」
「しかし、」
「息子さんとお袋さんが家で待ってるんでしょう?帰ってあげてください。」
ね?と首を傾げる望月に水木も諦めて身支度を始めた。
「・・・・・・悪いな。望月。」
「いえいえ。水木さんの為ならいくらでも!」
「ははっ、そうか。じゃあ、また明日。」
「お疲れ様です。水木さん。」
鞄を手に持って会社を出ていく水木の背中を、望月はじっと見つめていた。
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作者名:優咲ユウ | 作成日時:2024年1月28日 21時