五話 ページ17
「ただいま。」
「おかえり、水木。」
今日もあの路地裏を通ったが何事もなく家についた。あの子供がなんだか気に掛かって、無事でいれば良い、と考えてしまう。頭をガシガシかきながら部屋に入れば、鬼太郎の近くで目玉がやけに楽しそうに話していた。微笑ましい。あんな姿になってもちゃんと父親なんだなと思いながら水木はスーツを脱いだ。
「・・・・・・なあ、目玉。」
「なんじゃ?」
こいつなら、何か知っているかもしれない。
「人間を攫う妖怪を知ってるか?」
水木の言葉を聞いた途端、鬼太郎をあやしていた目玉がピタリと動きを止める。何かマズいことでも聞いたかと思い、なんでもないと告げようとすると目玉はいつになく真剣な表情でこちらを振り返った。
「水木。まさかお主・・・・・・」
赤い瞳が、光る。
「また面倒ごとに首を突っ込もうとしとるんじゃ無かろうな。」
圧のある声。その時、ほんの一瞬だけ。見覚えのない片目隠しの白髪の男が目玉と重なって見えた。ズキリ、と鈍い痛みが頭に走る。目玉からの圧に思わず息を呑めば、飲み込んだものが胃に落ちていくのがわかった。
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作者名:優咲ユウ | 作成日時:2024年1月28日 21時