三話 ページ15
「なぁ、もう聞いたか?"あの"話。」
「ああ、"あれ"な・・・・・・聞いたぞ。」
「お前ら、まさか本気にしてんのか?馬鹿馬鹿しい。」
朝。水木が会社へ出社すると、何やら同僚たちが集まって話をしていた。思わず耳に入った言葉に首を傾げると、一人の視線が水木に向く。
「水木。お前の家も気をつけろよ。」
「何をだ。」
「は?お前知らないのか?」
言葉に眉を顰めると、「危機感がない」と怒られた。話の筋が見えないと答えれば、同僚達は顔を見合わせた後、少し息を呑んで口を開く。
「最近、この辺りで人が消えるらしい。」
「は、?」
思わず間抜けな声が出た。
「消えるって・・・・・・人攫いか?」
「それがなんの手がかりもないらしい。」
「『神隠し』、なんて噂もあるな。」
「はっ。神隠しだァ?妖怪なんかがいるとでもいうのかよ。」
口々に噂を答える。人攫い。神隠し。前まで妖怪なんてものは信じていなかったが、現に目玉に足が生えたものが身近にいるため否定もできない。妖怪、という言葉に焦点を当てて考えていると、また同僚が口を開いた。
「しかも消えるのは大抵、十もいかない『子供』らしい。」
「子供・・・・・・」
一瞬、あの翠玉が頭をよぎる。まさか、いや、しかし・・・・・・。痩せ細ってぼろぼろの身なり。もし原因が人攫いや人売りだとしたら、あの子供は絶好の獲物になりえる。あんな子供が逃げ仰せたとしても大人の足に勝てるわけもない。そうでなければ良い、そうでなければ良いんだが・・・・・・。
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作者名:優咲ユウ | 作成日時:2024年1月28日 21時