一話 ページ13
「おかえり、水木。今日は随分早いのう?」
「まあな。」
水木が服を脱ぎながら何事もないように接しているそれは、確かに目玉に身体が生えた摩訶不思議な生物である。この目玉は鬼太郎を拾った数日後、自分が鬼太郎の父だと言ってきたのだ。最初こそ驚いたものだが、最近は世の中科学では説明できないものもあると割り切ることにしている。水木がぴょんぴょんと動き回るそれに目をやると、布団の上に置かれていた鬼太郎に話しかけていた。
「お袋の状態を見るに大丈夫だと思うが、お前、お袋の目の前に出てきてないだろうな?」
「もちろん。鬼太郎の面倒を見てもらっている身じゃ。余計なことはしない。」
「頼むぞ?お袋ももう歳だからな。」
驚いた拍子にうっかり心臓止めちまって、そのままポックリ、は流石に困る。
なんて言いながら、水木は寝巻きに腕を通した。
「(・・・・・・あの子供。夜はちゃんと落ち着ける場所にいるんだろうか。)」
思い出したのは昼間の子供。ボロボロでいかにも孤児という身なりをしていた。痩せ細って、服の隙間から見える肌には肉がなく、骨が浮き出ていて。見ているこっちが不安になるほど痩せていた。
「(・・・・・・でも、)」
あの翠玉だけは。
「水木?」
「・・・・・・。」
曇り一つなかったな。
「・・・・・・なんでもない。」
水木は帯を絞めると、鬼太郎を抱き抱えて自室を後にした。
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作者名:優咲ユウ | 作成日時:2024年1月28日 21時