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十話 ページ11

子供と水木がコッペパンを食べ終わると、水木は立ち上がって懐に手を伸ばした。一服しようかと思ったが、すぐにマッチが切れていたことを思い出して取り出すのをやめる。






「そういえばお前、普段どこで寝てー・・・・・・」






子供の方を振り返る。

が、そこに先ほどまであった子供の姿は跡形もなく無くなっていた。夏だと言うのにやけに冷たい風が路地裏を吹き抜ける。






「あいつ、何処に・・・・・・」






子供がしゃがんでいたところに目をやると、そこには子供の代わりに帳面と鉛筆、それと小さな箱が残されていた。






「“ごさそうちま”」






帳面に残された文字に水木は思わず苦笑する。






「ははっ。“ち”と“さ”の形、逆だろ・・・・・・」






小さな箱にはマッチが数本入っていた。護身用にでも持っていたのだろうか、なんて考えながら煙草を咥えてマッチを擦る。火をつければやけに高い空に向かって煙が伸び、そのまま静かに消えていった。






「(そういや、名前言うの忘れたな・・・・・・)」






あの翠玉を思い出しながら、水木は帰路へと足を進めた。

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作者名:優咲ユウ | 作成日時:2024年1月28日 21時

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