地獄からの開放 ページ13
「あの日、気がつけば朝が来てて、アンタはいなくなっててゼンとミツヒデに出会った。その日から私はゼンに仕えてる。地獄からは開放された。けど、何故か寝たら前の主人が私を攫いに来るのではないかと寝れなくなった」
私が話している間、オビは静かに話を聞いていた。
「オビにまた会えて嬉しかったのかもしれない。けれど、あの日のようにまた貴方が居なくなるんじゃないかとまた不安になった。」
だんだん声が震えてきて、また視界が滲む。
「もう嫌だ、あの地獄に戻るのも、ここから離れるのも、あんたがここからいなくなるのも…嫌なの」
ポロ、と堪えてた涙が、溢れてくる。
一度溢れたものはとどまらず何度も頬を伝ってシーツを濡らしていく。
そんな私を、オビは優しく抱きしめた。
「お嬢ちゃん、ごめん。無神経なこと言った」
「ほんと、無神経。馬鹿。」
「うん、ごめん」
悪態つく私にオビは謝るばかり。
「どうしたら許してくれるかい?」
少し身体を離して、オビが尋ねてくる。
「もう二度と、勝手にいなくならないって…約束して。」
子供じみた、そんなちっぽけな約束。
でもそれは私がずっと望んでいたこと。
大好きな人、大切な人、もう離れたくない。
オビも、ゼンも木々もミツヒデも、白雪も…
大切で、大好きだ。
「お安い御用ですよ、お嬢ちゃん。もう離れない。勝手に居なくならない。絶対お嬢ちゃんのところに帰ってくるから」
「…ほん、と?」
縛られるの嫌いそうなオビからそんな返事が返ってくるとは思わなかったので少々拍子抜けした。
「もちろん」
そう言って笑ったオビの笑顔をきっと私は忘れない。
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樹南(プロフ) - りとさん» りとさん、はじめまして(≧▽≦)そう言ってもらえてとても嬉しいです!!かめ更新ですがこれからもよろしくお願いします! (2022年6月18日 20時) (レス) id: 4dc2d64722 (このIDを非表示/違反報告)
りと - めちゃくちゃ良い展開…もう好き過ぎる… (2022年6月18日 0時) (レス) id: 4ac6ed922a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柊凪 | 作成日時:2021年3月27日 17時