97話 ページ5
撮影も終わり
ステージまでの時間はルイにとって1番の楽しみであった
「わーい!!海だぁ!!」
持参してきた水着を早速濡らす勢いで海へ入っていった
「危なっかしいですね。
僕はルイの様子を見るので蓮はここで休んでください。
携帯はありますよね?」
『…。』コク
いってきますと蓮に言うと少し駆け足でルイの後を追った
遠くから2人を一瞥すると鞄を漁り、本を取り出した
そしてしおりの挟まれたページをめくる
潮風で飛ばないよう押さえながら一枚、また一枚とめくる
『(……あつい……。)』
しかし、日陰にいるとはいえ夏の暑さは強烈だ
読書に集中できない蓮は本を閉じ、再び2人の様子を見た
『(…………笑ってる……
…そんなに楽しいのかな……あれ…。)』
そんなことを思いながらボーっと眺めていると
砂を踏む音が横から近づいてきた
「あ、白華くん。
撮影お疲れ様。」
見上げればプロデューサーとして同行してくれたあんず
彼女もどうやら休憩らしく右手には資料ではなくジュースを持っていた
「あはは、緋奈くん楽しそう。
白華くんは行かなくていいの?」
『………泳げないから…いい……。』
「え、そうなの?
あ!ごめんね。
なんか私、勝手に白華くんは何でも出来る人だと思ってたから。
不快だったかな?」
申し訳なさそうに様子を伺うあんず
蓮は間を置いてから口を開いた
『………分からない……けど……
不快には…なってない……と思う…。』
「そ、そう?」
そしてお互いに喋らない時間が流れる
ちらりと彼の方を見てみると
特別気にしていないようにただ前方を見ていた
横顔綺麗だなぁと思いながらも
あまりの気まずさに遂にあんずは切り出した
「…白華くんはさ、
どうしてアイドルになったの?
…あ、嫌ならいいんだけど。」
『………やらなきゃいけないこと…だから……。』
「…え?」
『………俺にとっての…1番の……課題……。
でも…そっか………
…なんでアイドルにしたんだろ……。
アイドルじゃなくてもよかった…気がする……。』
それ以上あんずは追求しなかった
ただ少しだけ話せたのが嬉しく無言の時間も嫌ではなかった
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作者名:アニット9 | 作成日時:2022年12月25日 21時