113話 ページ21
遊莉の看病の元、蓮の体調はすっかり好調になった
起き上がるのも億劫だったのだが
今ではベットの上で静かに本を読み進めている
「僕は夕ご飯を作ります。
キッチンお借りしますね。」
少し前に遊莉はそう言って部屋を出て行った
ペラリとページを捲る
すると窓の外から子供達の声が届いてきた
家に帰る時間なのだろうか
窓を閉めているとはいえ、こうも静かな部屋だと声が響いて聞こえてくる
ふと、蓮は本から窓の方に視線を移した
ーーたーーやきゅーーーよ!!
ーーくんーーーってーー!
あー!!ーーーもーーー!
彼らの手にはサッカーボール
3人共、元気よく走り去って行く
そのうちの1人はふらついて転びそうになるが、構わず2人の後を追っていく
その姿が小さくなるまで蓮はそれを見届けた
『………やったこと…ない…な………サッカー……。』
ぽつりと呟かれた言葉はひっそりと姿を消した
ピロン
するとスマホから通知オンが鳴った
手に取り、メールが届いていることを確認する
“からたにきをつけて、おたいしに”
“朔間零”
『…!』
そういえば連絡先を教えたなと学院祭のことを思い出す
しかし、あれから連絡がこなかったため蓮はすっかり忘れていた
初めて送られてきた文章は、読めなくはないもののメチャクチャである
どうやら濁点をつけ忘れているらしい
蓮は追加の連絡先に登録すると、遊莉の足音が聞こえてきた
カチャリと音を立てて扉が開かれると、遊莉が顔を出す
「蓮、ご飯ができました。
リビングに置いてきたので食べてくださいね。
僕はもう帰りますが、何かあればすぐに電話してください。」
『…わかった……。』
「それでは、また明日。」
そうして、家を出て行った遊莉を窓のから覗く
そして、蓮はご飯を食べようとベットから起き上がり、
スマホを机に置いた
「返信来ないんじゃけど!!
えっ、無視??!」
「いちいち五分おきに確認すんな。
ったく…
こっちはてめーの指導のせいでクタクタだっつーの!
チャラ男はさっさと帰りやがって…!!」
「ふむ、白華はこまめに連絡をするタイプではないのかもしれないな。」
「おいアドニス。
真面目に相手してんじゃねぇよ。くだらねぇ。」
「おーいおい…。」
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作者名:アニット9 | 作成日時:2022年12月25日 21時