105話 ページ13
「……。」
「……。」
「いらっしゃいませー。
ご注文はお決まりでしょうか?」
「…あー、
俺はいいんで、この人にトマトジュースひとつ下さい。」
「かしこまりました。」
本当にどうしてこんな面倒なことになったのだろうか
日頃から練習に参加せず遊び呆けているからだろうか
目の前にいる男は俯いたまま
「…見てたんだね。
その…2人のこと。」
すると零はポツポツと喋り始めた
「……たまたまなんじゃ…
たまたま買い出しに外界へ赴いただけなんじゃ…。
そしたら…店から出る蓮くんと見知らぬ女性が…!
あ、あんな…腕を組んで……ぅっ…
無理じゃ…我輩もう生きていけん……。」
「い、いやぁ…分かんないよ?
友達…とか。」
「友人同士であんな引っ付くわけなかろう…
しかも…
異性同士で……。」
異性同士という言葉が出た瞬間、零は少し声のトーンを落とした
「…。
(まぁ、そうだよね。
俺には同性を好きになる気持ちは分からないけど、
きっと難しい恋なんだろうな。)
あんたも苦労するね。」
お待たせしましたー!とジュースを持った店員が来た
カラン…と氷がコップにぶつかる音がみずみずしく、不思議と涼しくなる
「…蓮くんは、ああいう女性が好みなんじゃろうか…。」
「うーん、どうだろうね。
俺が見た限り、相手の人はグイグイいくタイプだったけど。
…少し意外だね。」
すると零は深いため息をつく
「我輩も…もっと積極的にいくべきだったかのう…。
うぅ…でも無理じゃよ…。
話すだけでも緊張するんじゃもん…。」
ペソペソと後悔の念を溢しながら
ぢゅーと音を立てながらストローでジュースを飲む
「…はぁ……だめじゃ、泣きそ…。」
ここまで弱っている零を見るのは初めてだった
暑さでクタクタになっているのとは違う
恋愛でここまで心を痛める様子が少し意外だった
「…朔間さんもこんなふうになっちゃうんだ。」
「当たり前じゃろ…。
…好きなんじゃもん。」
「ふーん…。」
彼が蓮を好いているのは分かっていた
相談はされていたし
スマホのカメラ機能を覚えて隠し撮りをしていたのは流石に引いたけど
「じゃあさ、教えてよ。
いつ好きになったの?」
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作者名:アニット9 | 作成日時:2022年12月25日 21時