魔王とモンシロチョウ

20話 ページ23

「なんじゃ、今度は我輩に相談かえ。」



「だって零くん仲良いじゃないですか。」


零はその言葉を聞くとぴたりと動きを止める




「…そう思ってくれたら…良いのう。」



そう言った零の表情は自嘲とは違う、何やら悲しさを帯びたものだった



つむぎはそんな表情を見れば黙りこくってしまった







「手伝ってくれてありがとうございました♪」



『よいよい、ただの気まぐれじゃ。』



零が出て行こうとすると

突然つむぎが声を掛ける



「零くん、お礼と言ってもなんですけど…


これ。」




「ん？」



つむぎはニコニコとしながら零にそれを渡した




「この本なんかオススメですよ♪」



タイトル

“気になるあの子に狙い撃ち♡”




零は受け取ると

渾身の力でつむぎを叩いた




「痛いですっ！」








ちょうどその頃


レッスン室にて





「ぅひゃぁっ！！」ﾄﾞﾃｯ


ターンをしてからの動きにルイは手こずっているようで、

何度もやってはすっ転ぶのを繰り返していた




「…ふむ、

やはりその動きは無理があるのでは？


ターンを少し改良して身の丈にあったものにするべきだと…。」




遊莉はそんなルイを見兼ねて

別の動きを提案する


しかしルイは首を横に振った




「ぅ〜やだ！

こっちの方がかっこいいもん！」



やだやだと駄々をこねる





「しかし…。」と遊莉が困ったように言うと


蓮が口を開く





『……ルイのしたいように…すれば良い…と思う。』



「蓮…。しかし、

本番までに間に合わなくなると…。」



ルイがその言葉にピクリと反応すると

顔を下に向けた



しかし蓮は言う




『……出来るまで……付き合う…から


…大丈夫……。』




蓮はそう言ってルイの頭を優しく撫でた


ルイは驚いたように顔を上げると

嬉しそうにふにゃりと笑う


これにため息をついた遊莉だが、参ったように笑った




「そうですね。

ルイの意見を尊重しましょうか。」




そうして3人は再び練習に励んだ






「お菓子の会社からのお仕事なのにぃ

なんかこう…かっこいい感じの曲だねぇ。


ちょっと意外だなぁ。」




「ふふ、そうですね。

しかし今回の依頼主“Ciel”では

主にカカオを多く配合したチョコレートを使用しています。


そういった面で見ればビターな曲が相応しいでしょう。」



「ひえぇ…なにそれぇ。ボク勉強不足ぅ！」


ルイはそう言って汗を拭った




「…まぁでも、

少しの砂糖こそ肝心ですよ。」

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