10. ページ10
雨が降っている。
他の学生は、全員お迎えの車に乗車して帰宅していく。
ぽつぽつ、と振り続ける雨粒は次第に大きくなっていく。
折りたたみ傘あったかなぁ、とカバンを漁ると、小学校のころから使っている水色の折りたたみ傘を発見した。これで帰れる、と安堵してシャオロンを待つ。
「あめ…」
雨音にも勝る声が聞こえた。独り言のようだったけど、私の耳には届いて。
声の方を見ると、金髪の男子生徒が空を見つめていた。その姿がやけに絵になるほどのイケメンっぷりに、彼をガン見してしまった。
私の視線に気付いたのか、彼もこちらを見る。
パチッと目が合った後、整った顔立ちが崩れ、眉を顰めた。うざったそうにする彼に対して、表情筋豊かだなぁと呑気に思った後、なんだかシャオロンと似たようなものを感じて声をかけていた。
「雨、酷いですね」
ざあ、ざあと、雨粒が地面に叩きつけられる。
声は帰ってこない。雨音が五月蠅いけど、別にこの音は嫌いじゃない。
「良ければどうぞ」
折りたたみ傘を差しだす。それを不思議そうに見つめた金髪の彼は、おずおずと傘を受け取り「…なんやこれ」と呟いた。傘知らないの？？？
こうやって使うんですよ、と折り畳み傘を開いて見せる。バッと広がった傘にビクっと驚いた彼は「すご」と感心していた。このヒトは、別格で金持ちのニオイがする。
「…これ、おれが借りたら、お前帰れんやろ」
「あー…」
言われてみればそうだ。
思わず傘を差しだしてしまったが、確かにこの雨の中だと帰れそうにない。
「まあ、なんとかなりますよ。貴方の方が、早く帰りたそうな顔してたんで」
雨があがるといいですね、
その言葉を合図に徐々に雨粒が小さくなっていく。
「A！！！帰ろうや！」
「あ。シャオロン」
パタパタと急いでやってきたシャオロンが遠くの方で見える。
「では。気を付けて帰ってくださいね」
「え、あ…」
ペコリ、と頭を下げてシャオロンの方へ向かう。
「コネシマと一緒におったん！？なんかされた！？いや、何もされんくても俺が許さん！彼奴、変なやつやから関わらんといて！なるべく！」と早口でシャオロンから説明を受けるが正直何も頭に入ってこなくて、金持ちの彼が”コネシマ”ということを知ったぐらいだった。
「雨、止んだね」
「雨降ってたんや」
「うん。あ、虹」
図書館から出て直ぐに雨は完全に止んだ。
傘、別に彼に貸さなくてもよかったなという後悔だけが残っている。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1078人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しめじ - めっちゃ好きです〜😭❤️これからも無理のない程度に更新頑張ってください！応援してます！ (11月28日 18時) (
レス) id: 34533725fa (このIDを非表示/違反報告)
匿名のヤツ - コメント失礼します。shaちゃん可愛すぎ、、額が足りひん。を間に受けるknが面白すぎる、、。 (11月4日 18時) (レス) @page13 id: 4d5241d02c (このIDを非表示/違反報告)
A(プロフ) - あんま可愛過ぎるやろ…不憫shoちゃん好き過ぎてほんと…よかったね、夢主ちゃんにいっぱい愛されるんだよ… (11月1日 15時) (レス) @page8 id: 9e64766d9e (このIDを非表示/違反報告)
りう - あ、、、すきっ (10月31日 23時) (レス) id: 8380e3b7c5 (このIDを非表示/違反報告)
るか(プロフ) - めっちゃ面白いです！更新頑張って下さい！ (10月29日 21時) (レス) id: a23b083970 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
