4 ページ4
…
パクパク、豪快に食べるその姿は清々しい。
鳥井は無我夢中で弁当を食べ続けている。
ここまで好まれると困惑も交えてくるのだが、やはり手作りの料理をここまで好きだと言い、褒めてくれるのに嫌な思いはしない。
美味しそうに食べる彼を見て無意識に頬が緩んだ。
「一週間」
「おん」
「無遅刻無欠席できたら、弁当作ってきてあげる」
「ほんまっ!?」
「ほんまほんま」
約束やで、と小指を突き出してきたので指切りをした。小学生以来だわ。
相変わらずフードで表情は見えないが、楽しみにウキウキしているのは分かった。
友人Aに”お前ゾムに何吹き込んだ!?”と怒鳴られたのはそれから三日後。
先生に”赤原はもしや不良を牛耳るボスなのか”と聞かれたのはそれから五日後。
そして土日を挟み、月曜日が来た。
隣の席の不良君が朝から真面目に登校してくる違和感も消えつつある今日、彼は待ちきれないといった様子で午前の授業をそわそわしながら受けていた。
「ごちそうさま」
「お粗末様です」
「おかわり」
「ねえよ」
この飯食えるなら、学校来るのも悪くないと嬉しそうに言う彼。
そしてぽつり、
「でも、なんかな。最近、Aの手料理やないと満足できへんねん」
呟いた。
「焼肉とか、寿司屋とか、レストランに行って食事しても、自炊して食事しても、腹には溜まるんやけどあんま味がせんっていうか、美味しいって思わんねん。どちらかというと、飯を誰かに食わせる方が楽しんよな」
あれ、それは、
「Aの料理は毎日絶品やて感じるのにな!」
中々にやばい奴じゃ…。
もやっとした感情が湧いている私に対して、彼は楽観的に”明日も作ってきてな”と笑った。
「Aの料理食えへんと、俺餓死しそうやわ」
笑えない冗談言うな。
714人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
わとまる - この賞セス (5月19日 22時) (レス) @page21 id: 91c3072f2a (このIDを非表示/違反報告)
人形傀儡(プロフ) - 心に刺さりました。めっちゃ好みです。 (2022年6月25日 18時) (レス) @page9 id: ebc8796329 (このIDを非表示/違反報告)
える@脅威推し - りぃさん» ご飯だけじゃなくて夢主ちゃんにも依存してくれると嬉しi(((( (2022年6月21日 16時) (レス) @page5 id: e5ffed06b8 (このIDを非表示/違反報告)
りぃ - 好きな作品だ…こういう性格?のzさん好きなんです…ご飯に依存しかけてますがこれからどうなるか楽しみです…!! (2022年6月21日 3時) (レス) @page5 id: ed9e6e4b74 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ