狐の恩返し【ゲゲゲの謎】

1. ページ2

いつも通りタバコの煙で包まれた仕事場で、龍賀製薬の時貞翁が亡くなったと私の上司に当たる2人が、社長室へ慌ただしく入って行のが横目に見えた。


確か、龍賀製薬って私たちが担当してるところだったような…


「おい孤崎(こざき)、ぼーっとしてるな。行くぞ」


横に座っていた水木という男は、私の頭をタバコの箱で軽く叩き、足早に社長室へ向かった。
私も「はい」と返事をし、その後を追う。


この男は、この職場で私の直属の上司に当たる。
取り引き相手との商談なんかも、ほとんどこの男と一緒なことが多い。


私と水木は社長の机の前に並ぶ。
龍賀時貞氏は日清、日露戦争に貢献し多大な財を築きあげたため、その時貞翁が亡くなったとなれば、龍賀家は跡目争いが起こってるはずだろう。


そこで龍賀家の次期当主に気に入って貰えば、今後の取引がしやすい。
全く、人間が考えそうな浅はかな魂胆だ。


「水木くん、孤崎くん、龍賀製薬は確か、君たちの担当だったね」

「はい、社長には可愛がってもらってます」

『次期当主を見届けるということであれば、ぜひ私たちに行かせてください』


やる気があるように見せるのも、ここでうまくやっていくためには重要なことだ。


次期当主を見届けたいが、誰を行かせるか迷っていた社長は、私たちのやる気を見てすぐに向かうように命じた。


「それと、龍賀製薬と言えば、例のものだが」


社長の言葉に、部屋中に緊張が走る。


「その件も、探ってきます」


例のもの_____製剤M
何でも、その製剤を使った者は、不死身のような身体になれるのだとか。
世界各国で戦争が繰り広げられてるこの時代では、どの国も金を注ぎ込むほど魅力的なモノ。


実際にそれを使った者を見た訳ではないが、もしその効果が本物だとすれば、人間の力だけで作れるモノでは無いだろうな。

2.→←はじまり

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す