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曦臣「…私は、彼女を止めたい。」
忘機と魏無羨に背を向けそう伝えたその後ろ姿は揺らぐことはなかった。
曦臣「さらに調査を続け、仙門百家として朱家の処分を検討しよう。
誰かがこの泥沼に手をくださなければならない。
それが彼女から生きがいを奪うことになっても…」
魏無羨「取り返しのつかないことになる前に、止めないとな。
きっといつか最善だったとわかる日が来るさ。」
忘機「…うん、」
二人は曦臣の判断に賛同した。その逞しさに、曦臣は瞳を閉じて言う。
曦臣「私は、彼女に恨まれてもいい。」
恨み憎まれ、蔑まれても…
復讐に燃え、血に染まる姿を見るくらいなら…
曦臣「彼女にこのことは知られてはないらない、
彼女のことは…頼んだよ。」
止めると決めたのだから。
忘機「はい…お任せください。」
彼女に何も言わず、また夜の調査に向かった。
その後ろ姿を見つめながら魏無羨は言った。
魏無羨「…なんで気付かないんだろうな、
こんなにも思ってくれる人がいるのに。」
あの時の自分を見ているようだ。
たった一人で突っ走って、
俺を信じてくれる人を蔑ろにした。
_その報いがあの結果だと言うなら…、
忘機「魏嬰…」
魏無羨「…あぁ、過去は変えられない。
失ったものは戻らない。」
憂いを帯びた瞳が笑顔に変わる。
魏無羨「でもこれから起きることなら、変えられるだろ？
沢無君のためにも頑張るか。」
その姿に忘機はほんの少し優しい表情をした。
人は嘘を付く、偽り裏切る。
口先でいくら繕っても、本心は別に隠し持っている
月明かりが照らす中、寝間着から着替え、貰った剣を指す。
鏡に映る姿に吐き気がした。
__お父上に、あなたはとても似ている。
屈辱だ、あんなゲス野郎と同じにされるだなんて…
__なんて疎ましいのだろうか…
歪んだ心は表情に出た。
この身が滅びようともあの家だけは許さない。
__すべてを喰らうまで、この憤りは沈まない。
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作者名：染子 | 作成日時：2022年1月17日 14時
