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暗い谷底に足を踏み入れる。
無言で、火を灯した。
灯火に彼女の横顔が照らされる。
「ここは…月の明かりも届かない。」
曦臣「あの時…、貴方はここに一人で落ちたのですか？」
この暗闇の中で見つけたときは、安堵した。
「怨念を辿った先がここだった。
その先に何があろうと、私は知りたいんだ。
何故、…こうなってしまったかを。」
曦臣「…」
彼女の瞳に宿る炎は火花を散らしていた。
この暗闇の中あの光は何を照らすのか。
見つかったのは一体の屍だった。
随分前のもので腐敗が進んでいるはずなのに、それからは怨念が感じられ腐っていない。
「これじゃあ、わからないな…」
状態が悪い、目で確認することは無理そうだ。
曦臣「いえ、なにか知っているかもしれません。」
「何か？」
曦臣「私達は死者の声を拾うことができます。
なにか手掛かりがあるかも知れません。」
静かに響く琴の音。
持っていたたいまつが怪しげに照らした。
含光君の後ろで待ち構えた。
ぼやけた魂が浮かび上がる。
琴の音が激しく鳴る。
その音が終わると、
返事を返すようにが形を成して映し出した。
ーどうかっ、
ひっ迫した表情の男が叫んでいる。
ーお、お助けを…
頭を必死に下げ許しを請う。
ー私は、何も知りません…
そんな男の懇願に耳も傾けず見下す者がいた。
映し出されたその者に、息が止まった。
黒髪を一つに束ね、
凛々しい瞳は、ときに冷酷で美しい、
酷く整った顔立ち。
その姿に、見覚えがあった。
その場にいた三人は彼女を見た。
瓜二つ、とも言える容姿に、
「私じゃない、あれは…
_____父の、朱春雷だ。」
皆はその言葉に目を見開く、
彼女は自らも驚くほど似ている姿のことよりも、
心の中の何が壊れた。
優秀だと皆から崇め、奉られる一方で裏では目も当てられない悪事を働いていたのだ。
「、」
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作者名：染子 | 作成日時：2022年1月17日 14時
