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腹いせには丁度良かった。
少しでも彼の嫌がる表情を、見たかった。
＿それなのに、
「…、どうして、抵抗しないんだ。」
吐息がかかるほど、近づいても彼は嫌がる素振りを見せなかった。
むしろ、
受け止めると言わんばかりに、黙っていた。
彼の瞳に悔しそうに睨む私が映る。
＿嗚呼、うざい。
疎ましい、
曦臣「…受け入れれば、
少しは貴方の気持ちに寄り添えるでしょうか？」
「…」
その言葉に更に表情は歪んだ。
予想と反する行動に、言葉を失う。
いかにも、聖君というように振る舞う彼に嫌気が差す。
「、気持ち悪い、萎えた。」
揺れかけた感情を押し留めて、手を引いた。
冷えた手で顔を覆う、
「っ出ていってくれ、顔も見たくない。」
彼という人間は、私のすべてを否定するような存在だった。
醜く、己の欲に忠実に動く朱家の者たちとは違う。
人を慈しみ、どんな悪でも手を差し伸べようとする
聖君、であり…私にとって毒であった。
＿＿こんな人間がいて、いいわけがない。
歪んだ心では彼を受け入れることはできなかった。
だから、怒りと憎しみをぶつけた
それでも改心させるように、毎日毎日飽きもせず部屋に赴き、羅漢に頼まれたように私の面倒を見ようとした。
「…剣を返せ、こんな生活に耐えられない。」
発狂しそうだった、逃げることもできず何もしないままここに閉じ込められるのは。
曦臣「渡せば、貴方は殺しに行くでしょう。
そうすれば貴方は取り返しのつかないことになる」
「すでにこの手は、この血は汚れている。
止められる筋合いはないっ。」
何度も同じやり取りをした。
頑なに止める彼と復讐に燃える私。
交わることもなければ、平行線をたどるだけ。
曦臣「…貴方の無念は私が打つ。
もう少しだけ待っていてください。」
彼の後ろ姿を睨む、だがここから出るのは至難の業だった。
規則を破り、朱家に血の雨を降らせば、仙門を敵に回すかもしれない。
下手な手は打てない。
拳を握りしめた。
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作者名：染子 | 作成日時：2022年1月17日 14時
