火花壱 (ページ33)

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先程までいた、羅漢の話を思い返す。

A様の母が殺害された事件、

朱家に纏る奇怪な噂は事実であり、家にとって不利益な情報をもみ消してきたこと。

権力争いに、血が流れたこと。

偽り、騙し合い、憎しみ合う。

羅漢『…私はあの家にA様が身を寄せることが、良いことだと思いこんでいました。

今では…その判断に後悔しています。

__私があの家に招き入れたから、…

A様をこんな目に合わせてしまった。』

羅漢の話に返す言葉もなかった。

見えてきた事実は受け入れがたく、

彼女がいかに一人で戦ってきたのかを思い知しる。

羅漢『…あの座を狙い続ける限り、

A様は命を狙われ続ける。

A様に裏切られたと思われてもいい、

あの家から引き離してください。』

曦臣『…』

羅漢『…復讐を失ったA様は、

きっと生きる意味を失うでしょう。

そんなA様を支えていただきたいのです。

将来、A様が一人にならないように…』

それが羅漢の唯一の頼みだった。

曦臣『…姑蘇藍氏も力を貸しましょう。

事を見逃してきた私どもにも罪があります。』

やんわりとその申し出を羅漢は断わった。

羅漢『それはなりません…

血で血を洗う戦に関係のない貴方がたを、

巻き込みたくありません。

きっとその気持ちはA様も同じです。』

手を貸すといった彼を突き放した彼女は、

天邪鬼なんかじゃなくてただこの争いに巻き込みたくなかったからだった。

頑固な意志を曲げないところは、羅漢もAも同じで同じ志を持つ者だからなのだろう。

羅漢『…A様のことを頼みます。』

止めても行くだろう、

すべての罪を背負う覚悟をした羅漢を見送ることしかできなかった。

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