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私と目も合わせず、冷たい態度の彼女。
「…」
曦臣「…気分を害してしまったでしょうか」
正体を知ってしまったことによる態度の違いは凄まじいものだった。
あの好意的な姿は偽物だったのだ。
「…そんな顔しないでもらえますか？
先程からチラチラと見られて不愉快です。」
不満そう睨まれる。
凛とした綺麗な瞳なのに、酷く冷たい。
「本性を知る者の前で、取り繕う気はありません」
曦臣「…では、一つだけ聞いてもいいでしょうか」
なんの返事も帰ってこない。
曦臣「みな…貴方のことを貴方のお父上と被せていて、
嫌ではないのですか？」
彼女より、みなは亡き者を被せて振る舞っているようにも見える。
「わざと似せている、と言ったら？」
曦臣「どうして、そんなことを…」
その呟きに、彼女の瞳は憂いそうに影を落とした。
「父は…私に無いものを沢山持っているからだ。
利用できるのならなんだって利用してみせるさ。」
人柄による人脈、
知名度、
権力、
仙師としても力を持っていた。
「それに…私は母似だ。」
曦臣「…そうなのですか？、」
「父は…こんな瞳の色ではない。
色素は母譲りだ。」
両親のことを話す彼女は、警戒心が強いのかどうなのかよくわからない。
曦臣「…二人のことをよく知っているのですね」
両親のことくらい知っていて当然かもしれないが…
曦臣「私は母上と、過ごす時間が短かったので」
離れで軟禁生活を送っていた母上とは、月に一度くらいしか会えなかった。
「…私も二人のことはよくわからない。
父の姿など見たこともない、弟子に教えてもらっただけだ。
…母は、物置のような人だった。
体の弱い母は、いつも外を眺めていた。」
私と同じ瞳、髪の色をしていた母。
母らしいことをしてもらった覚えはない。
「誰かを待っているのか、それともただ眺めていただけなのか。
寡黙だった母のことは…よくわからない。
だけど、母に越したことはないだろう。」
曦臣「母上のことが、好きだったのですね…」
横暴で利己的で強欲、だがこんな一面もあるらしい。
「…どう解釈したらそうなるんだ？」
その確信に、嬉しくなって微笑んだ。
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作者名：染子 | 作成日時：2022年1月17日 14時
