火花壱 (ページ16)

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忘機「…足の怪我はもうよいのでしょうか？」

門弟たちと修行に励む、朱の若様の姿が見える。

曦臣「言っても聞かなくてね、」

涼しい顔をしつつも負けず嫌いであることを、つい最近知った。

忘機「あの件に関して何か進展はありましたか？」

弟は薄々気付いているだろう。

朱の若様が好意的に狙われたことが。

そして、本人がそれを知りつつも偶然だとはぐらかしたことも。

__貴方に関係はない。

そのことについて問い詰めても、口を頑なに閉ざす彼を思い出した。

曦臣「いや…引き続き調べるよ」

言わないと、約束したからには言ってはならない。

彼が女であることも、

負けず嫌いな本性を持つことも。

そんな姿を見ているうちに、

__若様は、春雷様によく似ておられるな。

あの大会でひたすらと言われていたことを思い出す

__まるで生き写しのようだ。

曦臣「…朱の若様の父上、朱春雷はどのような方だったのでしょうか？」

叔父の藍啓仁に問う。

叔父は長い髭を擦りながら思い返すように、瞳を閉じた。

啓仁「この前言った通り、とても優秀な方だったがそれがどうかしたのか？」

曦臣「周りの者たちがよく似ていると、言っていたので気になりまして。」

男の姿をする理由もわかるかもしれない。

曦臣「あまりにも…みなその方のことを口にするとは思いませんか？」

あのときは気付かなかったが、今ではわかる。

お父上と似ていると言われた彼女は、嫌そうだった。

いいや、あの性格から考えて誰かと似ているだなんて言われて腹を立てないわけがない。

心底、うんざりしていたはずだ。

啓仁「春雷様は、廃れてしまった朱家の光だったからな。」

曦臣「廃れてしまった？」

啓仁「あぁ、昔は名家にも勝るほど影響力があったらしい。

それが、権力争いなどで徐々に縮退していった。

春雷様は、それを覆せるほどの優秀な男だった。」

曦臣「…そのような方がお亡くなりになられたのですね。」

啓仁「あぁ…噂も広がらぬうちに消えてしまった。

それに、よくよく考えてみれば…

彼に子がいたなど聞いたことがないな」

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