〃 ページ3
｢じゃあ、宏ちゃんが今日誘ってくれたのって…｣
｢誕生日祝い。おばさんもおじさんも居ないのに1人で過ごすなんて寂しいじゃんか。せっかく20歳になったのにさ｣
｢宏ちゃんっ…｣
なんでこんなに優しいんだろうこの人は
｢まだ驚くの早いって｣
テーブルに置かれたブザーを押すと店員さんが持ってきてくれたのはホールケーキ
Happy Birthday 大ちゃん
そう書かれたチョコレートが乗せられていた
｢20歳おめでとう。大ちゃん｣
｢ありがとう、宏ちゃん！｣
こんなに幸せな誕生日は初めてだ
毎年祝ってくれてはいたけど、ここまで大掛かりなことをされたことなんて無いし
それに、宏ちゃんと二人きりだから嬉しさ倍増だよ
｢このケーキ、持って帰っていいみたいだけどどうする？｣
｢宏ちゃんの家で食べたいな。お母さんとお父さんにも食べさせたいし｣
｢それ聞いたら親父たち喜ぶわ｣
店員さんに箱に入れてもらうようお願いしてくれてやっぱりスマートだなって思う
しかも知らないうちに会計済まされてたぽくてケーキ渡されてすぐレストラン出れたし
また電車に乗って今度は最寄り駅で降りて家までの帰り道を歩く
｢なぁ、大ちゃん｣
｢うん？何？｣
｢ちょっとさ、あそこの公園で話したいことあんだけどいい？｣
｢うん、いいよ？｣
宏ちゃんが指さした公園は、俺たちが初めて出会った場所
数々の思い出がある
ブランコに座って、言葉を待つ
きっと、すごく大事な話だから
｢実は、な。俺、大学卒業したら海外に行こうと思ってる｣
｢え…？｣
｢プロのサッカーチームから、スカウト受けてんだ｣
｢海外って…｣
｢ドイツ｣
すっごく、遠いな
来年の今頃には、もうこんなふうに宏ちゃんと気軽に会えないんだ
でも
｢おめでとう、宏ちゃん｣
｢大ちゃん…｣
｢それってさ、宏ちゃんが認められたってことでしょ？嬉しいなぁ、すっごく｣
寂しいし、悲しいけど、宏ちゃんがそれを望むなら
｢…ありがとう、大ちゃん。でもな、本当に伝えたいことは今の話じゃないんだ｣
｢…え？！他にもあんの？｣
｢うん。なぁ、大ちゃん｣
俺、大ちゃんの事好きなんだ
真正面から、いつもより開いた瞳でそう言われた
｢…あの、それって、｣
｢言葉のまんま。俺は大ちゃんが好き。恋愛的な意味でね｣
｢likeじゃなくて…｣
｢love｣
｢宏ちゃん…｣
多分俺、顔真っ赤だ
考えもしなかった
宏ちゃんが、俺の事好きだなんて…
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作者名：沙羅 x他1人 | 作成日時：2019年4月15日 21時
