対等 ページ28
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私がここに来る度掃除をしても次また来る時には散らかってる部屋。彼は本当にだらしのない人。明け方のまだ暗い時間、そんな彼の寝顔を眺めるのが好きだった。カラーを繰り返して傷んだ髪の毛も生え始めのチクチクした髭も意外と長い睫毛も。全部目の前にあるこの時間は誰のものでもなく私1人のものだった。1番手の届きそうな瞬間だった。
連絡くれるのはほんと〜〜〜〜〜に不定期で、彼にとって私はたくさんいる都合のいい女の1人に過ぎない。そんなこと重々承知で彼の部屋に出入りしていた。目を覚ました彼はいつも言う。「俺のこと見すぎてちょっと怖いわ」その返しを含め彼の全部を愛してるから他に女が居ようがどうでもよかった。それなのに……
「なんで怒んないわけ?」
(私が怒るの?どうして?)
「俺のこと好きじゃねーのかよ」
『好き、大好き』
「は?意味わかんねぇ、」
(え、え、どうして?なんで怒るの???どんな貴方でもいいって言ってるのに?)
「もっとなんかないの」
「そっちの気持ちぶつけて来るとか」
(気持ち…………?)
(あれ、なにこれ、)
数年前の深夜バラエティ。「雲の上の存在」そう言い放った彼が気になって仕方がなかった。触れてみたいと手を伸ばした瞬間画面は切り替わり、伸ばした手は空を彷徨う。そう、この日初めて見た名前も知らない彼に妙に惹かれていた。その彼が今目の前にいて私と対等になろうとしてくれている。初めて私と対等になろうとしてくれている。対等………………
『いらない』
見える景色が一瞬にして変わった気がした。数年前に私が伸ばした手を掴もうとしてくれた彼を私は今から手放す。
『ずっと、雲の上の存在でいてください』
(さようなら)
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テレビをつけると明るいピンク髪に目がいった。あの日より肌綺麗。トリートメントしなきゃダメなのに絶対これサボってるよ。あぁやっぱり……
『かっこいい……!』
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作者名:すぅぷ | 作成日時:2019年7月26日 19時