〈 これもきっと3月のせい�� 〉 ページ25
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通路の先には2人の人影。……誰かなんて言うまでもない、大谷さんと山本だ。
私も伊達に修羅場を潜り抜けていない。
死地(例:ギータさんの馬鹿力及び山田さんのパワハラ)だって幾度も乗り越えてきたわけで、そんな私の行動は早かった。回れ右ののち颯爽と場を去――
「あーこら、何逃げようとしてんの」
「あああああ痛い痛い痛い！！！ちょっ大谷さん手首が！！！ねじ切れる！！！」
――れるわけもなく、ガッツリと手首を掴まれて捕縛されてしまった。
「で、何してんの？プール楽しかった？」
「ア！！手首の向きが！！変わる！！！」
「なあ？随分はしゃいどるやん。水着なんか着てさあ」
「ちょっ骨！！そこ骨です！！折れる！！！」
必死に抗議しようが、大谷さんはニコニコ笑うだけで力を緩めようともしない。
山本に至っては「肌見せすぎやろ」だのと言って水着の肩紐を引っ張ってくる始末で、これはこれで別件で訴えたくなった。お願いですからここに弁護士を呼んでください。
「それで、何でプールなんか来たの？俺の了解もなしにさあ」
「いや大谷さんに了解取る意味がわかんないんですけど……」
「は？」
「あああああシヌ！！肩が取れる！！」
そして少しでも口答えするとこれである。えっ嘘でしょこの人ほんとに私のこと好きなの？裏返しとかいうレベルじゃなくない？
「違っ、そうじゃなくて！私は誘われただけですもん！！」
「でも誘いに乗ったのはAだよね？」
「そ、……それはそうですけど！でもあの、ちょっと無理やり連れて来られた？みたいな感じだし……。ハイ」
とにかく逃げ出したい一心で責任転嫁を図ると、山本がじっと眉を寄せる。
「じゃあ誰に誘われたん？」
「大勢くんです」
そこに迷いはなかった。
申し訳ないが彼には犠牲になって頂くしかない。ごめんね骨は拾って原監督に渡すからね……。
「ふ〜ん。それで強引に連れてこられたの？」
「全くもってその通りです」
「プールに無理やり？」
「いやもうほんと家族とか人質に取られてます」
「適当ばっか言うなや」
山本の手刀が額を襲う。適当じゃない、詭弁だ。
「はあ。……何でAはこうも心配かけさせることばっかするかなあ」
そう言って溜息を吐き、大谷さんは私の腕を掴む力を緩める。
そんなこと言ったって、そっちが勝手に心配してるだけだ。私のせいにしないでもらいたい。……とか言ったらまた怒るんだろうけど。
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作者名：あちちっ！ | 作成日時：2023年8月11日 14時
