〈 これもきっと3月のせい�� 〉 ページ21
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「あ、Aさん！」
「……私は行かないよ」
「まだ何も言ってないんですけど」
翌日、3月19日。数時間後に全体練習を控えた午前のこと。
二日酔いのような頭痛に悩まされる中、私は部屋を訪ねて来た後輩――大勢くんにきっぱりとそう言った。
……いや、まだ何も言ってないって言っても。
「格好が雄弁すぎるでしょ。なんで室内で水着着てんの」
「プール行くからです」
「ほれ見たことか！」
そんなことだろうと思った。だから断ったんだよ私は。
「えー、行きましょうよ。せっかくホテルにプールあるんですよ？」
「行かないって。私水着持ってないもん」
「さっきそこで売ってましたよ」
「……」
……無駄に用意のいいホテルである。まずい、逃げ道がない。
「あー、……い、今持ち合わせが0.5ドルしかないかもしれない」
「0.5ドルって。そう言うなら50セントでしょ」
「細かいことは良いんだよ！とにかく無理！」
「あ、大丈夫ですよ。誘ったの俺達なんでこっちで出しますし」
「……」
そしてこの野球選手クオリティ。そうだった、日本代表の人たちって年俸高いんだった……。
「……みんなの楽しい時間に私が割り込んじゃダメだと思う」
「一応満場一致で誘おうって決まったんすけど」
「……」
「もういいっすか？遊ぶ時間なくなりますよ」
そう言い、大勢くんは首を傾げた。……こ、これだから最近の若い子は……。
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「ハァ〜〜？？何が白や、大人しく黒にせえって！」
「だって白の方が可愛いんですもん。山田さんに指図されたくないです」
「アホか！どこに男しかおらん場で白の水着着るアホがおんねん！」
「そんな目で見るの山田さんだけでしょ！変態！」
「は！？」
「言っときますけど黒の水着ゴリ押ししてくるのもちょっと趣味出てますから！スケベ！」
「こいつほんま、……いっぺん黙らしたろかマジで……」
結局押し負け、水着選びに向かった矢先。
思いっきり眉を寄せたプール参加者の山田さんから目を逸らし、私は「これにする」と白の水着を大勢くんへ渡した。
大勢くんは気まずそうに私と山田さんとを見比べたものの、しかし頷いてお会計へ向かう。せっかく着るなら可愛い方がいいもんね。
「……後で覚えとけよお前」
「もう忘れました」
「ラッシュガード着いひんとほんまに怒るからな」
とか言って、山田さんは小さく舌を打った。……もう既に怒ってるくせに。
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作者名：あちちっ！ | 作成日時：2023年8月11日 14時
