〈 お酒は20歳になってから�� 〉 ページ19
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――俯いたAの顔を覗き込んで、濡れた瞳と目が合ったとき、ふと「やばい」と思った。
喉の奥が締め付けられ、息が止まったような感覚に襲われて。
鼓動が僅かに速度を上げるのを感じながら思う。その可愛い可愛い顔が赤いのはアルコールのせいだろうか。俺のせいだったら良かったのに。
「ぅ、………」
「なに、頭痛い？」
兎にも角にも、まずはAを部屋まで送ってらなければならない。
そんなわけで俺の支えありきでやっと歩き出してくれたAは、問いかけにゆるく頷いた。
「そっか。もうちょいでエレベーター来るから、我慢できる？」
「………」
「ふ、えらい。もう少し体重かけていいよ」
優しく優しく頭を撫でてやると、Aは掴んでいた俺の手に腕を絡ませた。きっとこれがAなりに楽な体勢なのだろう。
こんなことシラフじゃやってくんねえな、と苦笑し、もう一度頭を撫でてやる。まさかここまで酒に弱いとは。……俺がいない間に漬け込まれてなきゃ良いのだけど。
「お、……おこってますか」
――とか何とか言って、結局俺の下心も送り狼と相違ないのに。
Aが相変わらず潤んだ瞳で俺を見上げている。
視線を絡ませ「なんで？」と尋ねると、Aは不安げに目を伏せた。このころころと変わる表情も素直さも、やっぱりシラフじゃ見せてくれないものばかりで。
「だ、だって、………あ、呆れてるもん」
「俺が？」
「めいわくかけてるし、」
「はは、思ってねえよそんなこと」
思わず唇の端から笑いが漏れた。まさか思うはずがない。
むしろずるいことをしたなと反省したくらいだ。善意を盾に酒に呑まれた女の子と2人になるなんて、今時必死な若者でもやりはしないのに。
「……おもってないの？」
「思ってないよ」
「う、うそだ………」
「嘘じゃねえよ。忘れたの？」
「なにが」
「俺Aのこと好きなんだけど」
つい先日、溢れた想いを処理しきれなくて口をついた愛の言葉。
まさか忘れてやいないだろうが、彼女の記憶を塗り直すようにして改めて口にすると、Aはぽかんとした顔で俺を見上げた。
それから、大きな瞳を見開くと。
「い、い、いま言わなくってもいいじゃん……！」
「だから迷惑じゃないよ。好きな子と一緒にいれんだもん」
「も、いいってば……！わかった！」
そう言って、今度こそ俺のせいで顔を真っ赤に染めた。
支配欲みたいなものが、満たされた気がした。
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作者名：あちちっ！ | 作成日時：2023年8月11日 14時
