好きって言ってください【F.Tatsuya】

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目が覚めたと思ったら見知らぬ天井




自分の手に誰かの手の感覚があって目を動かして誰なのかを確認する




「A？わかる？」


『しゃ、ちょう…』




握られていた手は社長の手で、安堵する




覚えている記憶は渡辺さんと食事に行って、交差点を渡ろうとしたとこ




それが最後に思い出せる記憶




母「A！」


『…お母さん…』


母「よかった、心配したのよ」




体を起き上がらせてもいいと許可を貰いベッドの上に座っていると




病室のドアが開いた




数年ぶりに見る母親だった




『なに？…今更？』


母「ごめんね、ちゃんと話すから」




私が言って欲しかったことは伝わっているようで




椅子に座って喋り始めた




母「Aのことを思って…でも、逆だったみたいほんとにごめんなさい」




本題は、何故私が社長と結婚しなければいけなかったのか




婚姻届を突き出された時は、社長がそれを望むのならと思いサインしたが




今思えば安易な考えすぎる




母「辰哉くんにお願いしたの、Aのことをどうか幸せにしてくれないかって」




お母さんが言うには、社長？会長に資金援助をしたらしい、うちの父親が




その交換条件として、私を幸せにして欲しいと社長に頼み込み




そして、幸せにする方法なんて具体的に分からない社長は最終的に結婚という方向に持ってった




『それで？お父さんはどこにいるの？』


母「今入院してるの、だからこっちの病院に来てる」


『…そう…』




今更何か言う気力は私に残っていなくて、しかも、離婚しないと決めたのは私だったから




尚更何も言えない




疲れた、そう思い、ため息が出た瞬間外から大きな音が聞こえた




渡「お前さ…」




微かに渡辺さんの声が聞こえてきて、数年ぶりに怒った声が聞いた




渡「引き止めろよ」
「簡単に離そうとするなよ」




確かに渡辺さんの声、誰かと言い争っている様子




しばらくすると両方の声が聞こえなくなり、病室に社長が入ってきた




「A、ごめんね、俺仕事戻らなくちゃいけないや」


『…仕事を、優先、してください』




秘書なら、社長に仕えるものなら、仕事を優先的にするべきだ




でもどこか彼に行って欲しくなくて、喉まで行かないでという言葉が込み上げてくる




既の所で心の奥底へしまった




「また、来るから」


『…はい』




精一杯笑ったつもりだった









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