好きって言ってください【F.Tatsuya】

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「まじ？あ、ちょ、待って」




掴まれていた腕を引き剥がし




扉までまた歩き出そうとするとまた掴まれた




『なんですか』


「一週間、一週間でいいからまだ居て」


『…社長、私がいなくてもやっていかなければなりません』


「分かってる」


『家にも、ここにも、私はもう居ないんです』




早いことに先日用意してもらったマンションに引っ越した




だから、もう彼と一緒に住んでいない




「…でも、ほんとごめん」




何についての謝罪なのか




気づけば彼の腕の中に収まっていて




それでも私は引き剥がすことも、嫌だと声を上げることもしなかった




「一週間で決める」


『何をですか？』


「離婚届、だから、日曜日に最後だと思って一緒にデートして？」


『…一週間で決めなくても…』


「Aも嫌でしょ？笑好きじゃないやつとずっと長引いて結婚したままって笑」




力なく笑ったその顔を見ると何が正解だったのか




私はどこで間違って彼をこんな顔をさせてしまったのかを悔やんだ




「よし、ごめん抱きついて」


『…私も、ごめんなさい』




離れようとした身体を巻き戻すかのように彼の背中に手を回した




「A…？」


『あ、えっと…こ、今週は来ますので！』




無意識だった為慌てて手を離し




外へ出た




それから私の最後の一週間が始まった、死ぬわけじゃないんだけどね




『足立さん、社長の前では私情でスマホは使ってはダメです』


『足立さん、社長になにかする際は、許可を取ってから』




態度からなってない




スケジュールも曖昧に覚えてるし、他会社の社長の前でも失礼な態度ばかり




その度に私が頭を下げる




社長の為だと思いながら頭を下げているが、決して彼女の為ではない





＿＿＿＿＿＿＿






渡「お前、足立にそんな態度取ってんのかよ…」


『…え？…いけないのでしょうか…』




プライベートで誘われた他会社の社長渡辺翔太さん




数年前から親交があって今でもこうして時々お食事に呼んでいただく




渡「考えてみろよ、足立だぞ？聞いた事あるだろ」


『…っは！…もしかして…足立グループの、娘？』


渡「そうだよ」


『足立グループって…』


渡「首飛んでないだけマシだな笑」




気づいてしまった事実にこれから生きていける自信が無くなった








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