○田舎者○ ページ1
hk side.
「さむ…」
「ちょっと薄着で来すぎたな」
夏とは言えども、夜の海は寒い。
海のある街で育った俺なら当たり前のように分かることだ。
「やぶは薄着すぎるよ」
海に関することは俺の方が詳しい…って思ってる
「なぁ光。どーやったら体温あがるか知ってる?」
「首とか脇を温めるんじゃないの?」
さすがにこれくらいなら俺にも分かること。
なんでも知ってる薮にでも、俺に勝てないことがあるんだ
「ふーん、不正解」
「…そーなの?」
って前言撤回。
やっぱり俺、やぶには敵わないわ。
「寒かったらな、こうすんの」
「…?」
先に言っておくけど、俺とやぶは別にそういう仲じゃない。
キスは出来ないこともないし、ハグだって何とも思わないけど
俺らの中にはソレではない何か特別なものがあるだけ。
今だって海岸を歩く俺を薮が追う形で前後並んでに歩いていて、
こうすんの、って言った割に何もしてこない薮を不審に思って振り返った。
ただそれだけ。
「っ、」
もう一度言っとくけど、本当に俺とやぶはそういう仲じゃない。
でも唇に触れたものを理解するのには時間がかからなかった。
「…っ、何やってんの」
「ハハ、これで温ったまったんじゃね?」
温まったかどうかは別として、寒さは感じなくなった。
ただ頭の中が混乱して。
そんな中、海風が吹いた。
いまの俺にとっては心地よい冷たさで、もう少しここに居たいと思うほど。
あぁ…、俺火照ってんだ、
「うぉ、やっぱ寒みーな。光〜、ホテル戻ろーぜ」
こんなに顔が火照ってちゃ、ホテルなんて暑いに決まってる。
でもそんなの、当の本人は気にもしないし、そもそも知らない。
「…やぶのせいだからな、責任とれよ」
「あぁ。分かったよ笑」
それっぽいことを言わなくても理解してもらえるのは
多分やぶだから。
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作者名:み。 | 作成日時:2022年2月28日 17時