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「違う、小指こっち。……そう。薬指はここ」
「……」
「なぁ光、聞いてる？」
さっきからこの調子で進めてるけど、光からは全く反応がない。
集中してるんだなとは思いつつも、どう考えたって静かすぎる。
「光？」
「わ、分かったから……！ひとりで、やらせて……」
やっと反応したと思ったら、今度は俺から逃げるように離れて、ギターを握りしめたまま下を向く。特にこれといったことをしたわけではない。
でも、光のようすが違うのは明らかだった。
いまだに動くどころか、余計にギターを抱きしめるように強く握ってるし。
「ごめん、俺なんか変なことした？」
光はフルフルと首を振り、声も出さないで返事をする。
最近はハーフアップにするくらい伸びた髪が、フワフワと光に合わせて動き、そこで俺はハッとする。
「……あぁ、そういうことか」
「なっ、なにして、！」
「耳弱いんだな」
さっき首を振ったときに見えた耳が真っ赤に染まってるのが見えて、
少しからかうようにその耳に触ると、光はすごい勢いで俺の手を払って耳を覆い、涙目で俺を睨んだ。
「違う、耳が弱いんじゃない……っ」
周りのやつが、よく光を見て猫みたいだと騒いでた意味がやっと分かった。
怒りからなのか、少し息を上げて俺を睨み続ける光は、たしかに毛を逆立てた猫のようだ。
「じゃあ何？」
「……こ、コンビニ行ってくる」
俺の言葉を聞いた瞬間、光はハッと何かに気づいたように急に立ち上がった。
「え、ちょ、光！？」
パタンと閉まったドアの音が寂しそうに響いて、
俺は光が置いてったギターを拾い上げる。
なんだよ、アイツ。よく分かんねぇ……
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作者名：み。 | 作成日時：2024年2月15日 0時
